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【解答乱麻】「一湯同心」の体験通し伝える 開善塾教育相談研究所所長・藤崎育子

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【解答乱麻】
「一湯同心」の体験通し伝える 開善塾教育相談研究所所長・藤崎育子

 東北に10年来通う温泉宿がある。障子越しに隣室のテレビの音や話し声、廊下の足音が自然に耳に入ってくる。まるで田舎の祖父母宅に帰ってきたような感じだ。共同炊事場では食事時、みそ汁の香りが漂い、見知らぬ者同士も言葉を交わす。

 隣室のおばあちゃん3人組は田んぼ仲間。御年86歳。田植えが終わったので湯治に来たという。かくしゃくとした外見から想像できない実年齢に驚くと、「昔と違って機械がやってくれるでね。楽なもんだよ」とにっこり。稲刈りの後と雪の季節、年に計3回湯治に来る。4泊5日分の献立を考え準備するのも頭を使うからいいのだという。

 長年働いてきた世代の生きざまに触れると、人生の豊かさとは何か考えさせられる。

 私も長年群馬で不登校やひきこもりの青少年たちと合宿を行ってきたが、楽しみは何といっても食べることと温泉である。

 皆で車に乗り込み、15キロほど離れた日帰り温泉に向かう。

 温泉に入ると一斉に顔がほころぶ。お湯の中では誰もが解放されて、手足が伸びる。体や髪を洗う段になると子供たちはてきぱきとする。

 合宿所に戻ると食事の準備が待っている。食事時間から逆算して、何時ごろには温泉を出発するからと入浴前に告げる。

 学校を休んで家にいる子供には日中十分な時間がある。長風呂が習慣となっている子が多く、中には、お風呂でゲームをしたり、音楽を聴いたりして数時間も過ごす。

 しかし経験の少ない子供だからこそ、時間を守る、身支度を短時間でし、集団行動ができるようにするといった体験を積ませたい。何でも好きなだけ、やりたいだけやるという過ごし方だけでは、いざというときに困るのは子供自身だと思うからだ。

 出発時間が迫ってくると、「もっとゆっくりしたいのに」と言う子もいるが、皆で協力し合って時間を守ると、一人一人の動きが回を増すごとによくなり、自信も生まれる。

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