産経ニュース

【アート 美】「中村忠二展」 静かで詩情豊かな世界

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【アート 美】
「中村忠二展」 静かで詩情豊かな世界

「夜航船」昭和42年 モノタイプ 「夜航船」昭和42年 モノタイプ

 見る者を圧倒するような激しい絵があるかと思えば、身の回りの事物を題材に吸い寄せられるような小さな絵もある。明治から昭和を生きた画家、中村忠二。生誕120年を記念する展覧会が、晩年の20年を暮らしていたゆかりの地にある練馬区立美術館で開かれている。

 忠二の絵画は具象と抽象の境界を行き来しながら、詩情豊かな世界を見せてくれる。例えば「からす西へ行く」は具象なのか抽象なのか。凧(たこ)のように黒い布が飛んでいる。全体を覆う黒い色彩や浮遊するイメージはカラスを連想しないでもない。方角を示すNやSなどアルファベットが4隅に刻まれている。画家になる前、船上生活の経験があったが、航海時代の記憶がよみがえったのだろうか。心象的な風景でもある。

 忠二は小学校を卒業後、電信通信術を取得して郵便局に就職した。20歳で上京し、絵を学ぶために日本美術学校に入学。油彩画を学ぶも翌年には退学してしまう。その後は、ロシアのウラジオストクで邦字日刊新聞の記者や、船の無線オペレーターなどとして働いた。

 32歳のとき、海上生活から脱して画業に専念する。油彩画、水墨画、水彩画を描き、帝展・文展(現・日展)に応募するも落選を続けた。初入選したのは昭和11年、38歳だった。しばらく素朴な油彩画を描いていたが、33年から制作の中心はモノタイプに移行した。モノタイプとは一般的にガラスや金属の板に直接描画し、それを紙に転写する版画技法で、ほかの版画と違い複製のない1点もの。忠二はほぼ独学でその技法をマスターし、表現に磨きをかけた。

続きを読む

このニュースの写真

  • 「中村忠二展」 静かで詩情豊かな世界
  • 「中村忠二展」 静かで詩情豊かな世界
  • 「中村忠二展」 静かで詩情豊かな世界

「ライフ」のランキング