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【話の肖像画】映画監督ヤン・ヨンヒ(1) 小説「朝鮮大学校物語」発表 “祖国”敵に回した総連幹部の娘

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【話の肖像画】
映画監督ヤン・ヨンヒ(1) 小説「朝鮮大学校物語」発表 “祖国”敵に回した総連幹部の娘

ヤン・ヨンヒさん(斎藤良雄撮影) ヤン・ヨンヒさん(斎藤良雄撮影)

 〈父親は大阪朝鮮学園の理事長も務めた、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の幹部。北朝鮮への忠誠を誓う「模範家族」の一員だった娘は今、祖国への渡航が禁じられている。平壌に暮らす家族の様子を撮影し、知られざる当地の生活実態を描いたドキュメンタリー「ディア・ピョンヤン」を発表したことが、北朝鮮の逆鱗(げきりん)に触れた〉

 北朝鮮に渡って暮らす兄の1人が亡くなり、北朝鮮訪問を計画していたところ、母が組織の担当者から呼び出され、「娘さんは行けません」と言われました。「謝罪文を書きますか」ですって。書くわけないだろ、と鼻で笑いましたが。

 作品は、体制批判をする目的で作ったものでは決してありませんでした。しかし、北の反応を受け、あやふやなスタンスでいるのもいやになった。謝罪文の代わりに、自分の回答として「愛しきソナ」や「かぞくのくに」を発表し、さらにもう一歩踏み込んだ表現に挑戦しました。

 「作品が、北朝鮮で暮らす家族に不利益を与えないか」。海外の映画祭でよく尋ねられます。24時間365日心配です。でも、どこの国にも良い話があり、悪い話がある。いろんな家族がいる。家族が人質に取られているといって、それを口にできない時代はもう終わりにしたい。私はただ、「うちの家族」を描いただけなんです。(聞き手 時吉達也)

                   

 【プロフィル】ヤン・ヨンヒ

 昭和39年、大阪府生まれ。在日コリアン2世。朝鮮大学校文学部卒業後、大阪朝鮮高級学校の国語教師を経て、役者やラジオパーソナリティーとして活動。北朝鮮で生活する家族を題材にしたドキュメンタリー「ディア・ピョンヤン」(平成17年)「愛しきソナ」(21年)が世界各地の映画祭で注目を集める。北朝鮮から一時帰国した兄と在日の妹らの家族の絆を描いた映画「かぞくのくに」はキネマ旬報ベストテンで、24年公開の日本映画1位に選ばれた。今年3月、小説「朝鮮大学校物語」(KADOKAWA)を発表した。

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