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【書評】ノンフィクション作家・河合香織が読む『消された信仰 「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』 素朴だが純粋な祈りの原型

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【書評】
ノンフィクション作家・河合香織が読む『消された信仰 「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』 素朴だが純粋な祈りの原型

『消された信仰 「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』 『消された信仰 「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」がユネスコの世界遺産に登録された。しかし、最後のかくれキリシタンが暮らす「生月(いきつき)島」は、世界遺産の構成資産にはならなかった。長崎県が2014年に作成したパンフレットでは、その伝統は〈今なお大切に守られています〉と書かれていたが、17年の改訂版では〈現在ではほぼ消滅している〉と反対の意に書き換えられている。なぜ、この島は見捨てられたのか-。本書はその謎に綿密な取材で迫るノンフィクションである。

 禁教が解かれた明治期、カトリック教会に復帰した「潜伏キリシタン」と、そのままの信仰を守り、カトリックに戻ることを拒んだ「かくれキリシタン」は異なると主張するカトリック研究者の説が紹介される。「かくれキリシタン」は「もう隠れていない」し、聖画と神棚と仏壇が隣に並ぶ生月島の信仰は「純粋なキリスト教ではない」というのだ。またオラショという口伝で伝誦された祈りも、島民の多くは意味を理解していなかったという。

 確かに正統派からすれば異端に見えるかもしれない。その視線は、弱者の視点に立ったといわれるカトリック作家、遠藤周作にも見られたと著者は分析する。一方、祖父がプロテスタントの牧師だったが、「ペーパークリスチャン」として信仰から遠ざかっていた著者は、自身もまた異端であると捉えていたからこそ、まなざしは地を這(は)い、温かい。

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