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【書評】書評家・石井千湖が読む『火のないところに煙は』(芦沢央著)現実世界の不気味さあらわに

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書評家・石井千湖が読む『火のないところに煙は』(芦沢央著)現実世界の不気味さあらわに

『火のないところに煙は』 『火のないところに煙は』

 10万部を突破した『悪いものが、来ませんように』などで注目を集める芦沢央(よう)が、実話に見立てた語り口で怪異を描く。『火のないところに煙は』は、本当にあった出来事と錯覚してしまうほどリアルな暗黒ミステリだ。

 怪談をテーマに短編の執筆を依頼された小説家の「私」が、クローゼットにしまい込んだ1枚のポスターを思い出す場面で物語の幕は開く。

 8年前、「私」はオカルトや都市伝説関係の雑学本を編集したことがきっかけで、広告代理店に勤める女性の相談に乗った。彼女は結婚を考えている恋人とよく当たるという評判の〈神楽坂の母〉と呼ばれる占い師に会いに行った。ところが占い師は2人の将来は不幸になると断言。怒って占いを信じなかった恋人は、だんだん様子がおかしくなって事故死したという。そして彼女の担当する交通広告のポスターに〈赤黒いインクをつけた筆を振ったみたいな小さな染み〉があらわれる。

 きちんと点検して額に入れたあとは誰も触れることができないのに、いつのまにか汚れているポスター。その汚れをルーペで拡大した瞬間、無数の文字が書かれていることが明らかになるくだりにぞわっと肌があわ立つ。死んだ恋人が染みを使って伝えたかったメッセージとは……。

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