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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら〈29〉】桂歌丸さんと「憧れ」

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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら〈29〉】
桂歌丸さんと「憧れ」

国立演芸場の4月中席公演、初日トリの高座で落語「小間物屋政談」を口演する桂歌丸さん。平成29年8月以来、久しぶりの寄席復帰になった=4月11日(栫井千春撮影) 国立演芸場の4月中席公演、初日トリの高座で落語「小間物屋政談」を口演する桂歌丸さん。平成29年8月以来、久しぶりの寄席復帰になった=4月11日(栫井千春撮影)

それはキング牧師の夢

 ウソのような本当の話。落語とは大喜利(おおぎり)であり、落語家とは洒落(しゃれ)が上手で機転のきく芸人だと思い込んでいる日本人が驚くほどたくさんいる。国民的人気番組ともいえる日本テレビ系の「笑点」の影響だ。考えてみれば、東京や大阪以外の土地で、気楽に本当の落語を楽しむのはなかなかできない相談だ。「笑点」を見てそう思い込むのも無理はない。

 落語と落語家についてこうした偏った認識を多くの日本人にすり込んだ「下手人」が亡くなった。桂歌丸さんである。昭和41年の番組開始から半世紀にわたってレギュラーを務め、先代三遊亭円楽さんの後をうけて司会も担当した。

 20年ほど前、演芸担当記者だった私にとって、仕事とは寄席や独演会に通うことだった。当時の二つ目のなかには勉強熱心でユニークな個性を持った若手が多かった。立川談春、柳家喬太郎、林家たい平、三遊亭新潟(現白鳥)、林家彦いち、橘家文吾(現文蔵)…。忘れてはならないのは真打ちに昇進したばかりの春風亭昇太だ。所属団体である落語芸術協会の期待を背負って新作落語をバリバリと披露していた。彼の「ストレスの海」や「悲しみにてやんでい」はいまや古典である。

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