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【産経抄】
7月2日

 主人公の新聞記者は、過激派のミサイル爆破事件を追ううちに、高校の天文部ロケット班の仲間たちと再会する。旧宇宙開発事業団の研究者、材料工学の技術者、やり手の商社マン、そしてミリオンセラーを連発するロックシンガー。

 ▼彼らとともに、再び宇宙をめざすことになった。民間人だけでロケットを打ち上げる。作家の川端裕人さんのデビュー作『夏のロケット』は、その可能性を描いた作品である。平成10年の刊行当時は、荒唐無稽な物語にも思えた。

 ▼ところがすでに米国では、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届けているスペースX社をはじめ、民間企業が続々と宇宙ビジネスに参入している。日本でもベンチャー企業のインターステラテクノロジズ(IST)が、民間単独での日本初のロケット打ち上げをめざし、川端さんも注目してきた。

 ▼ISTが開発した観測ロケット「MOMO」2号機は全長10メートル、重さは1トン。安価な電子部品を利用するなどして、わずか数千万円のコストに抑えた。本社を置く北海道大樹町で先月30日、高度100キロ到達を目標に打ち上げられたが、直後に落下、炎上した。

 ▼昨年7月の初号機の打ち上げも、宇宙空間に届かず、失敗している。ロケットの打ち上げ場所として町の知名度が上がり、雇用の創出と観光客の増加をもくろんできた地元の落胆は大きい。ISTに出資する実業家の堀江貴文さんは、「デスバレー(死の谷)」という言葉を使って、ロケット開発から事業化に至る道の険しさを語っていた。

 ▼ISTの稲川貴大社長は東工大在学中、ロケットサークルを設立していた。「夏のロケット」のメンバーと同じように、夢を実現できるだろうか。3号機の打ち上げが正念場である。

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