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【書評】作家・黒川創が読む『鶴見俊輔全漫画論 1・2』鶴見俊輔著、松田哲夫編 「思想の屈伸体操」の効力

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【書評】
作家・黒川創が読む『鶴見俊輔全漫画論 1・2』鶴見俊輔著、松田哲夫編 「思想の屈伸体操」の効力

『鶴見俊輔全漫画論1・2』鶴見俊輔著、松田哲夫編(ちくま学芸文庫・1600~1700円+税) 『鶴見俊輔全漫画論1・2』鶴見俊輔著、松田哲夫編(ちくま学芸文庫・1600~1700円+税)

 3年前、満93歳で死去した哲学者・鶴見俊輔は、生涯を通して、漫画の熱心な読者だった。

 学齢前に、初めて手にした漫画本は宮尾しげを『団子串助漫遊記』。3歳から小学校に入学するまでに、何十回も読み返した。初読時の新鮮な感動を取り戻したいと考え、本をしばらく土に埋めたこともある。もう良いころだろうと掘り起こすと、ぶよぶよにふやけて、アリがたかっていた。日に当てて、本を乾かし、また読んだ。やがて綴(と)じ糸は切れ、表紙も取れてしまった。

 成人後は、戦後早くから、貸本漫画を愛読。水木しげる、白土三平らの作品と出合う。漫画雑誌「ガロ」が創刊されると、つげ義春らの活躍も目撃した。

 一方、少年の同性愛を描く竹宮恵子『風と木の詩』など、果敢に表現を広げる少女漫画。山上たつひこ『がきデカ』など、世間のひんしゅくを買いつづける少年ギャグ漫画。さらに時代が下ると、岩明均『寄生獣』、高野文子『黄色い本』、こうの史代『夕凪の街 桜の国』など、ジャンルにこだわりなく、彼は漫画が好きなのだった。

 こうした漫画ざんまいには、同好の助言者が欠かせない。編集者・松田哲夫も、その一人である。

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