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【この本と出会った】『園芸家12カ月』カレル・チャペック著、小松太郎訳 作家・藤井青銅さん ホースは陰険な動物で…

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【この本と出会った】
『園芸家12カ月』カレル・チャペック著、小松太郎訳 作家・藤井青銅さん ホースは陰険な動物で…

『園芸家12カ月』カレル・チャペック著、小松太郎訳(中公文庫・495円+税) 『園芸家12カ月』カレル・チャペック著、小松太郎訳(中公文庫・495円+税)

 中学生の時、北杜夫の『どくとるマンボウ』シリーズのファンになった。そこから入ってさまざまな本を読んでいく中で、カレル・チャペックという名前は知っていた。「ロボット」という言葉を作ったことで有名な『R.U.R.』や『山椒魚(さんしょううお)戦争』の著者として、高校生のぼくはずっとSFの人だと思っていた。

 だから大学生の時、発売されたばかりのチャペックの文庫本『園芸家12カ月』を見つけ、「へえ、こんな本も書くんだ」と意外に思った。が、読んでみてビックリ。大ファンになったのだ。

 この本で一番印象に残っているのは、庭の水まきについて「ホースというやつは、人間が手なずけるまでは非常に陰険な動物で、うっかりできない。かがむ。はねあがる。からだの下に大きな水たまりをこしらえる。しかも、そうやって自分でこしらえたぬかるみの中へもぐるのが、なんともうれしくってたまらない」と語る箇所。本全体にたっぷり書かれている花や庭木や雑草や土のことなど、何も憶(おぼ)えてやしないのだ。

 園芸の本ではあるが、そこに描かれているのは人間とか世間とか自然とか…その他、われわれが日頃見ていながら実は見ていなかったなにかだ。残念ながらこの本でぼくは園芸にはまらなかったが、チャペックには、はまった。

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