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【書評】『ディス・イズ・ザ・デイ』津村記久子著 観客視点のサッカー小説

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【書評】
『ディス・イズ・ザ・デイ』津村記久子著 観客視点のサッカー小説

『ディス・イズ・ザ・デイ』津村記久子著(朝日新聞出版・1600円+税) 『ディス・イズ・ザ・デイ』津村記久子著(朝日新聞出版・1600円+税)

 読み終えて思い浮かべたのは、スタジアムの青々とした芝生。試合前のざわめきが反響する通路からスタンドへ出ると、ピシッと整えられた緑色の長方形が眼下に広がる。観客の目が注がれる空間には「晴れ舞台」という言葉が似合う。

 青森のネプタドーレ弘前から、鹿児島の桜島ヴァルカンまで、全22チームで競うプロサッカー「二部リーグ」の各スタジアムに集う、さまざまな人々を活写した群像劇だ。観客の視点から、サッカーの魅力を見事に描き出す。

 「三鷹を取り戻す」の主人公は、地元の三鷹ロスゲレロスに微妙な思いを抱く貴志。中学生の頃、巨漢のディフェンダー若生(わこう)が気に入った。でも三鷹は弱かった。同級生がばかにして笑うのに反論できなかった。素直に応援できないまま、見捨てた。でも若生が監督になったというので、久しぶりにスタジアムを訪ねることにしたら…。

 「若松家ダービー」は、高校1年の息子を心配する母親の視点で物語が始まる。一家で泉大津ディアブロの試合に行くのが恒例だったのに、嫌がるようになった。隠れてアルバイトをしていて週末もずっと外出。歓楽街のコンビニのレシートを見つけて驚かされるが、じつは琵琶湖トルメンタスというライバルを応援するようになっていて…。

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