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【書評】この研究でイグ・ノーベル賞 『蜂と蟻に刺されてみた』ジャスティン・O・シュミット著、今西康子訳

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【書評】
この研究でイグ・ノーベル賞 『蜂と蟻に刺されてみた』ジャスティン・O・シュミット著、今西康子訳

『蜂と蟻に刺されてみた』ジャスティン・O・シュミット著、今西康子訳 『蜂と蟻に刺されてみた』ジャスティン・O・シュミット著、今西康子訳

 タイトルだけを見れば、著者は変わった趣味を持つ人に違いない、と思うだろう。ましてや、この研究で、かの名高きイグ・ノーベル賞を受賞しているのだから。

 だが、実際の著者は極めて真摯(しんし)な生物学者で、本書も上質の科学読み物である。蜂と蟻(アリ)に刺されてみるのは、痛さの尺度(シュミット指数)を作るためだったのだ。

 蜂と蟻は刺し針を持ち、相手を刺して毒液を注入する。刺し針は産卵管が変化したものであり、すなわち刺すのは雌だけ。蜂や蟻は刺し針を持つことで集団を形成し、高度な社会性を持ち、その結果、動物の中でも大きな割合を占めることが可能になった。

 「虫刺され」という現象の基本特性はふたつある、と著者は言う。痛みと、生体組織に対する毒性である。

 蜂や蟻の毒が刺された相手の身体をどれほど損傷するかという比較は、生理学や毒性学の手法を用いればさほど難しいことではない。だが、痛みを測ること、数値化することは極めて難しい。痛みは曖昧で複雑なものだ。感受性には個人差があり、刺される部位によっても大きく異なる。

 だからこそ著者は、自分自身を物差しにした。世界中で82種類もの蜂や蟻に刺されて、その痛みを評価した。

 痛み等級はレベル1からレベル4の4段階。中間(基準)値として、セイヨウミツバチに刺されたときの痛みの強さをレベル2としたのは、ミツバチが世界中にいて、刺された経験を持つ人も多く、イメージしやすいからだ。

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