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もしも母国がなくなったら 多和田葉子さん新刊「地球にちりばめられて」 切り離せない痛みと美しさ

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もしも母国がなくなったら 多和田葉子さん新刊「地球にちりばめられて」 切り離せない痛みと美しさ

音やリズムに着目した言葉遊びも盛りだくさん。「固まってしまっているものを言葉を使って自由にしたい」と話す多和田葉子さん(酒巻俊介撮影) 音やリズムに着目した言葉遊びも盛りだくさん。「固まってしまっているものを言葉を使って自由にしたい」と話す多和田葉子さん(酒巻俊介撮影)

 読みながら、自分の頭の中にある世界地図が変わっていく。それが不安であり心地良くもある。多和田葉子さん(58)の新しい長編『地球にちりばめられて』(講談社)。国や言語の境界を超えて旅する若者の物語には、ドイツに暮らす作家らしい肌感覚と問いかけが潜む。(海老沢類)

 「日本から届くのは震災に津波…と大変なニュースばかり。非現実的と思われるかもしれないけれど、ヨーロッパに長く住んでいると、『突然日本がなくなって、帰れなくなったらどうしよう?』って思う瞬間があるんです」。着想について聞くと、多和田さんはそう切り出した。

 物語はデンマークのテレビ番組の描写から始まる。生まれ育った国がすでに存在しない人ばかりを集めた番組に出ていたのは、留学中に故郷の列島が消えてしまったという女性Hiruko。彼女は一人で生き抜くために手作りの言語を操っていた。母語に「旨味(ウマミ)」という言葉があり、故郷は雪深い「北越」…。日本を思わせる国で育ったHirukoは言語学を研究する青年、クヌートと出会い、広大なヨーロッパで自分と同じ母語を話す人間を探す旅に出る。

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