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【書評】『キネマトグラフィカ』古内一絵著 仕事や生き方に悩む人へ

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【書評】
『キネマトグラフィカ』古内一絵著 仕事や生き方に悩む人へ

『キネマトグラフィカ』古内一絵著 『キネマトグラフィカ』古内一絵著

 平成元(1989)年春、東京の老舗映画会社に男女6人が同期入社した。今や、映画といえばデジタルとシネコンだが、かつてはプリントした「フィルム」と単独の「映画館」の世界。6人が入社したのも、そんな時代だった。

 30年後、6人は群馬県のある街の老舗映画館にそろう。同期の1人が館主を務める映画館の閉館に立ち会うためだったが、そこで彼、彼女らの人生が振り返られる-。

 同期のうち、主人公の咲子は営業部に配属され、「ローカルセールス」を担当した。系列映画館を持たない映画会社が、地方の独立系映画館で上映してもらうための営業部隊だ。映画興行界の古い体質やセクハラに戸惑い、傷つきながらも咲子は映画を作りたい、プロデュースしたいという夢を持ち、「業界初の女セールス」として知られるようになる。そして今や、「ママさんプロデューサー」。夢はかなった。しかし…。

 残りの女性2人。唯一の短大出身者は、事務職で早く結婚して安定した家庭を持つことを望む。もう1人の帰国子女はコネ入社だが、海外作品の買い付けで実力を発揮していく。男性3人は、同期中ダントツの映画マニア、小市民ではない自分を夢見る体育会系、気楽に世の中を渡っていきたいチャラ男の面々。男女とも、少々ステレオタイプのキャラクター設定ながら、リアリティーはある。

 そんな6人にあるとき“事件”が起きる。会社の鉄板コンテンツである旧作時代劇の上映スケジュールでチャラ男がダブルブッキング。このままでは予定した地方の映画館の上映に穴があいてしまう。

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