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【本ナビ+1】キャスター・タレント、ホラン千秋 丁寧に生きる先に幸福が… 辻村深月著『青空と逃げる』

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【本ナビ+1】
キャスター・タレント、ホラン千秋 丁寧に生きる先に幸福が… 辻村深月著『青空と逃げる』

女優・タレントのホラン千秋さん 女優・タレントのホラン千秋さん

 親子や家族にとって本当に大切なことは何なのか。少し距離を置き、時間をかけて考えることで初めて見えてくるものがある。そういう家族のプロセスを、丹念に描いた長編小説だ。

 舞台俳優をしている本城拳と妻の早苗、そして小学校5年生になる息子の力。仲の良い3人で営んできた普通の家族の日常が、ある夏の出来事によって失われる。拳は共演する女優が運転する車に乗っていて事故に遭い、突然姿を消してしまうのだ。売り出し中の女優の不倫スキャンダルにマスコミは色めき立ち、自宅にまで押しかける。興味本位の視線にさらされた早苗と力は東京を飛び出す。一方、女優が所属する芸能事務所は、拳との接点を求め、早苗と力の足跡を追う。高知の四万十から兵庫の家島へ-。2人の逃亡の日々が、それぞれの視点から交互に語られる。

 物語の大枠はドラマチックそのもの。でも、話の本筋からは外れた日常の細部が印象深く掬(すく)い上げられている。別れ際に四万十の友人たちがくれたエビの揚げ物の香ばしさ(食べ物はどれもおいしそう!)、きらきら輝くサバの鱗(うろこ)をくっつけた顔で、若々しく微笑(ほほえ)む鮮魚店のおばちゃん、季節の移り変わりを告げる空気の肌触り。何げない素朴な日常の中に、親子はきらめきを見つけ、それをパワーにしながら前に進もうとする。日々を丁寧に生きる先に、きっと幸福がある。

 逃げ続ける2人の上にはいつも大きな青空がある。逃亡で肩身が狭く、つらい思いをしても、上を向けば悪いことばかりじゃないのかもしれない。読んだ後、そんなメッセージも胸に響いてくる。(中央公論新社・1600円+税)

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