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【歴史の交差点】深化する中東複合危機 武蔵野大特任教授・山内昌之

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【歴史の交差点】
深化する中東複合危機 武蔵野大特任教授・山内昌之

 15日、ニューヨークの国連本部で、パレスチナのマンスール国連大使(中央)と共に取材に応じるアラブ諸国の国連大使ら(共同)  15日、ニューヨークの国連本部で、パレスチナのマンスール国連大使(中央)と共に取材に応じるアラブ諸国の国連大使ら(共同)

 2018年春の中東情勢は、私が以前に定義した複合危機の様相をますますあらわにしている(『中東複合危機から第三次世界大戦へ』PHP新書)。

 その第1は、アメリカのJCPOA(共同包括的行動計画)離脱へのイランの反発が、シリア駐屯の革命防衛隊クドス軍団のイスラエル攻撃を促して、シリア問題の解決をますます複雑化させたことだ。第2は、イスラエルと在シリアの革命防衛隊との相互攻撃によって、イスラエルとイランが正面衝突する危機的可能性を排除できなくなったことである。

 第3に、アメリカ大使館のエルサレム移転に抗議するパレスチナ人から50人以上の死者が出た悲劇である。アメリカは中東和平の公平な調停者たる資格を自ら放棄してしまった。もとより、イランがシリアへ過剰に関与して国の一体性を損ない、イスラエルを不必要に挑発してきた側面も否定できない。

 中東複合危機の新たな深化は、ロシアやイランの方に政略と作戦の結合した中東再編戦略があるのに、オバマとトランプ両大統領の政策の断絶で生じたアメリカ外交の不利益とも無関係ではない。

 2018年に入るとシリアのアサド大統領は7回も小規模な化学兵器攻撃を実施したが、トランプ氏は格別に反応しなかった。シリア政治の現局面は、イスラエルが分析するようにアサド政権の勝利、というよりアサド氏を支援してきたロシアとイラン、ひいてはレバノンのヒズブッラの陣営の勝利に終わろうとしている。

 少なくとも、4者の相当な優位のもとに内戦が最終局面を迎えているのは確実だ。トランプ氏は、自由シリア軍(FSA)などの苦境を知りながら、あるいは知るゆえに、シリアから撤退すると述べているのだ。

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