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【寄稿】角野栄子さん「国際アンデルセン賞」 言葉には音もあり風景もある

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【寄稿】
角野栄子さん「国際アンデルセン賞」 言葉には音もあり風景もある

国際アンデルセン賞に選ばれ、会見した児童文学作家の角野栄子さん=3月27日、東京都新宿区(飯田英男撮影) 国際アンデルセン賞に選ばれ、会見した児童文学作家の角野栄子さん=3月27日、東京都新宿区(飯田英男撮影)

 「この作品のテーマはなんですか?」と、しばしば聞かれる。また「この作品のテーマはかくかくしかじかですよね」と言われる。これが一番苦手だ。「テーマはありません」とぶっきらぼうに答えてしまったこともあった。だけど、83年も生きていれば、自分の中にテーマがないはずはない。

 10歳で敗戦を迎えるまでは、テーマぎちぎちの中で生きてきた。ひとつのテーマを信じ、ほかの考えなど持ったこともなかった。まだ子供だったけど、やっぱり息苦しさを感じていたのだろう。戦後、都合の悪くなった教科書の文章は墨で消され、今まで当たり前だったものが、いとも簡単に変わってしまった。「民主主義って、なんだか分からないけど、楽しそう。こっちの方が絶対いい」と思った。単純は子供の特権だ。そして、私の中に、もう人から押しつけられるのはいやだという、強い感覚が生まれた。折しも反抗期の始まり。やたら大人の押しつけを拒絶して、自分を確保しようと必死になった。敵性語だったはずの英語の勉強も始まった。そして、現在進行形という言葉を知った。BE+動詞+ing --なんだかロマンチック。そうだ。これからは、現在進行形でいこう。前を向いて歩くように生きていこう。12歳の私は、新しい風が吹いてきたように感じた。

 だから、あからさまにテーマは書きたくないのだ。押しつけがましいことは書きたくない。でも、何かは書きたい! 創ってみたい!

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