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【新・仕事の周辺】平田オリザ(劇作家・演出家) せりふが声になる幸福

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【新・仕事の周辺】
平田オリザ(劇作家・演出家) せりふが声になる幸福

平田オリザさん 平田オリザさん

 海外での仕事が多く、1年の4分の1ほどを異国の地で過ごしている。私の作品自体は「あぁ」とか「えぇ」とか「まぁ、そのぉ」といった間投詞の多い、きわめて日本的なコミュニケーションを駆使したものがほとんどだ。そういった冗長な戯曲は欧州ではかえって珍しく、それが私に作品の依頼が来る一つの要因になっている。

 逆に日本では「平田さんの作品のニュアンスが、海外できちんと伝わるのですか?」と心配される。「きちんと伝わる」ということが、「私の意図通りに伝わる」ことを意味するなら、おそらくそれは、きちんとは伝わってはいない。だが、私はそれでいいと思っている。

 劇作家というのは不思議な職業だとつくづく思う。

 劇作家の書いた言葉は、俳優を通じて語られる。もちろん、ただ読まれることだけを前提とした作品もあるが、基本的に演劇の台本は俳優が言葉にすることを目的として書かれている。そして、俳優は決して、私の思った通りには喋(しゃべ)ってくれない。劇作家には元来、その種の断念がある。だから、「きちんと伝える」ということには、そもそも関心が薄い。

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