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【原発最前線】「運転ブランク」の懸念的中した玄海原発の蒸気漏れ 来年以降、空白は「8年超」に

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【原発最前線】
「運転ブランク」の懸念的中した玄海原発の蒸気漏れ 来年以降、空白は「8年超」に

九州電力玄海原発3号機の2次系配管の空気抜き管で見つかった穴(矢印)(九電提供) 九州電力玄海原発3号機の2次系配管の空気抜き管で見つかった穴(矢印)(九電提供)

 再稼働の遅れによる原発の「運転ブランク」の問題を再認識させるトラブルが3月下旬、九州電力玄海原発3号機(佐賀県)で発生した。放射性物質を含まない2次系の配管から蒸気が漏れ、配管に穴が開いていることが判明。原因は7年以上の停止期間中に、雨水で保温材がぬれたことによる腐食で、運転すれば熱で乾いていた部分だった。原発の新たな再稼働は6月以降、1年以上の空白が生じる見通しで、電力会社には細心の点検が求められる。(社会部編集委員 鵜野光博)

発送電停止

 九電によると、3月30日午後7時ごろ、巡回中の作業員が屋外の配管の上部から蒸気がわずかに漏れているのを発見した。配管は「脱気器空気抜き管」と呼ばれ、中を流れているのは炉心を通った水ではなく、炉心を通ってきた水の熱を受け取り、発電のためにタービンを回した熱水と蒸気だ。含まれているわずかな酸素や炭酸ガスが配管を腐食させるため、脱気器で除去している。この配管を交換するには水の温度を下げる必要があり、翌31日、玄海原発3号機は発送電を停止した。同月23日に再稼働、25日に発送電を開始したばかりだった。

 点検調査の結果、16本ある空気抜き管のうちの1本に長さ13ミリ、幅6ミリ程度の穴が見つかった。管は保温材と外装板に覆われており、外装板の隙間から雨水が入り込み、保温材が湿った状態のまま長期間が経過したため、炭素鋼の管を外側から腐食させて貫通したとみられる。

 九電は対策として、空気抜き管16本すべてを交換。3号機の設備全体で腐食や異常の兆候を見逃さないよう点検を行ったとしている。4月18日には発送電を再開。当初、4月26日に開始予定だった営業運転は5月16日に延期になった。九電によると、3号機が営業運転できないことによる損失は1日当たり1・8億円に上るという。

「47年もつ」はずが…

 九電によると、問題の配管は平成19年2月、高温高圧の蒸気で内面が減肉していないか点検が行われ、「47年もつ」と評価されたという。ただ、「外面に関して目視はしていたが、外装板と保温材を取って配管を直接見るようなことはしていなかった」と九電。点検方法と頻度について、今後見直しを行うとしている。

 今回のトラブルの重要度はどんなものだったのか。

 原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長は4月4日の定例会見で、放射性物質に接しない2次系で起きたこのトラブルについて、「安全上のインパクトにかかわるような話ではない」と述べた。一方、「報告を最初に聞いたときに浮かんだのは、美浜原発のケースだった」とも語った。関西電力美浜原発3号機では16年8月、タービン建屋で2次系の復水配管が破裂し、140度の熱水と蒸気が噴出。その場にいた5人が死亡、6人が重傷を負った。

 更田氏は「今回のトラブルは、配管の場所や中を流れている流体の圧力、温度などを考えると、美浜の事例とはずいぶん違う。作業者の安全が大きく懸念されるものではない」とした。九電によると、穴が開いた部分の前後に弁で蒸気などを止める構造がなかったため、交換作業の安全性を確保するため、発電を止めるしかなかったという。更田氏は「作業者の安全を守るのは九電の責務であり、しっかりやってほしい」と要望した。

「慎重、着実な再稼働準備を」

 更田氏はこの会見で、「運転ブランク」の問題にも言及した。

 「今回の事例は“長期停止もの”の典型。年に1回動かしていれば温かい部分だから、(保温剤は)ずっと乾いている。7年間にわたって連続的にぬれている状態は、設計者の想定を超えている。電気事業者やプラントメーカーの多くの人たちが、これを教訓として考え込んでいるのではないか」

 その上で、長期停止原発に求めるものとして「長く止めていたものを動かすのは、おそらく初期の設計時の想定を超えている。再稼働前の確認は、今まで以上に慎重、着実な準備が大事だ」と述べた。

 今後の原発再稼働は、玄海原発4号機と関電大飯原発4号機が5月にも行う見通しだが、その後は、40年を超える運転が認められた関電高浜原発1号機の31年10月の予定まで、再稼働の動きはない(再稼働後に裁判で運転差し止めとなった原発は除く)。来年以降の再稼働はおしなべて「8年以上のブランク」がのしかかることになる。

 東北電力女川原発、中国電力島根原発、北海道電力泊原発などは規制委の審査が長引いて合格時期は見通せず、昨年暮れに合格した東京電力柏崎刈羽原発6、7号機も新潟県が福島第1原発事故の検証に「2、3年かかる」としており、再稼働時期のめどは立たない。

 ある電力会社は「玄海原発のトラブルを受けて、当社の原発でも一部、保温材をはがして配管を点検した」と明かした。他山の石とする地道な取り組みしか、安全な再稼働への道はない。

 ■玄海原発 佐賀県玄海町にある九州電力の加圧水型軽水炉(PWR)。1~4号機が昭和50~平成9年に順次、営業運転を始めた。3号機はウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマルを国内初導入。29年1月、4号機とともに原子力規制委員会の安全審査に合格した。出力は118万km/pワット。九電は老朽化した1号機の廃炉に着手、2号機の存廃を検討している。

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