産経ニュース

【書評】『「五足の靴」をゆく 明治の修学旅行』森まゆみ著 文学青年たちと姉貴分の旅

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【書評】
『「五足の靴」をゆく 明治の修学旅行』森まゆみ著 文学青年たちと姉貴分の旅

『「五足の靴」をゆく 明治の修学旅行』森まゆみ著 『「五足の靴」をゆく 明治の修学旅行』森まゆみ著

 明治40年の夏、5人の青年たちが南蛮文化を探訪するため九州へ旅立った。「五足の靴」を名乗るこの旅のメンバーは与謝野鉄幹、北原白秋、吉井勇、平野萬里、木下杢太郎である。明治末期にひととき咲いたロマンチシズムの花とも言えるこの旅に、本書はあらためて付き添う。5人の旅の軌跡を実際に辿(たど)り、彼らが見たものを見、また彼らが見なかったものを見てゆく。 明治の青年たちはエキゾチシズムの夢に包まれていたが、著者の眼差(まなざ)しはリアルで乾いている。さらりと風通しの良い文体で九州の街々の今が伝えられ、明治の青年たちの夢が振り返られる。時には「膨らみに膨らんだ妄想」と、この旅を契機に書かれた白秋の詩集『邪宗門』に横溢(おういつ)するエキゾチシズムに茶々(ちゃちゃ)も入れる。文学青年たちに付き添うデキる姉貴分といった趣で何とも面白い。

 それにしても何が彼らを突き動かしたのか。本書の読みどころは森鴎外を研究してきた著者が、5人の夢の背景にその影響を見ている点だろう。従来ゲーテの『イタリア紀行』の影響は語られてきた。だが、著者は鴎外の翻訳小説の影響を指摘する。

続きを読む

「ライフ」のランキング