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【書評】『山熊田』亀山亮著 「生死の手触り」感じる人々

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【書評】
『山熊田』亀山亮著 「生死の手触り」感じる人々

『山熊田』亀山亮著 『山熊田』亀山亮著

 新潟県村上市山熊田(やまくまた)。山形県との県境にある山村で、20年前までは除雪車が入れず、冬になると交通が閉ざされたという。そこに住むのは、わずかに19家族、48人。『山熊田』は、この村の人々の営為を記録した写真集だ。

 地名が示唆するように、この村では焼き畑農業と熊の巻狩り、そして稲作が仕事のすべてだ。写真家はその仕事の様子を丹念に追っていく。

 夏の夜、村人は山に火をつけて燃やし、その跡に種を蒔(ま)く。長い冬が明けると、マタギの男たちは隊を組んで山に入り、熊を狩る。

 彼ら彼女らが山に立つ姿が、中南米のゲリラのように見えてしまうのは、この写真家が20歳から世界の戦場を渡り歩いて、写真を撮ってきたからかもしれない。常に最も近いところから、対象に肉薄しようとしている。

 安穏な都会の生活に慣れてしまった私たちと同じ民族とは思えないほど、村人たちの顔は緊張感に満ちており、ふてぶてしい。

 白無垢(しろむく)を着て嫁入りした娘も、すぐに山に入り、山焼きに立ち会う。また、シナ布織り(シナの樹皮から採った繊維を使った織物)に習熟するようになる。そうやって、村の一員になっていく。

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