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【書評】『デカルトの憂鬱 マイナスの感情を確実に乗り越える方法』 哲学は実に「役に立つ」

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【書評】
『デカルトの憂鬱 マイナスの感情を確実に乗り越える方法』 哲学は実に「役に立つ」

『デカルトの憂鬱 マイナスの感情を確実に乗り越える方法』津崎良典著 『デカルトの憂鬱 マイナスの感情を確実に乗り越える方法』津崎良典著

 哲学者・デカルトのイメージを覆すユニークな入門書である。デカルトの名は学校で習っていても、彼の書を愛読したり、デカルトその人に親しみの感情を持っていたりする読者は多くはないだろう。

 そんな私たちに、筑波大学准教授の著者は豊富な喩(たと)えを用いてデカルトの言葉をわかりやすく解き明かす。自らの学識と経験を「たっぷり」と惜しみなく注ぎ込んで語るツザキ先生の講義を聴いている間に、合理主義者の一般名詞にすらなっているデカルトの言葉に生き生きとした血が流れてくる。

 冷徹な堅物と思っていた哲学者は、宗教的一体性が崩壊した17世紀のヨーロッパで「確実なもの」を追い求め、精神の自由を信じ、より良き高邁(こうまい)な生を願って格闘したひとりの人間としてその姿を現す。そして三十年戦争で国を追われたプファルツ選帝侯の王女エリザベトに「憂鬱」を癒やす術を伝授した哲学者の言葉を、私たちも共感をもってたどっていることに気づくのである。

 そのための秀逸な仕掛けが、「癒やす」「死ぬ」「愛する」「助け合う」といった私たちにもなじみ深い21の動詞に沿ってデカルトの哲学を紹介する本書の独創的な構成である。

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