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【書評】『死の島』小池真理子著 人間にとって真の救いとは

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【書評】
『死の島』小池真理子著 人間にとって真の救いとは

『死の島』小池真理子著 『死の島』小池真理子著

 ひょっとしたら作者は主人公と同じくがんに冒されていて、余命いくばくもない状況なのではないか。そう錯覚させてしまうほど末期がんにある者の覚悟の自死というテーマが鋭く重く迫ってくる。

 主人公は、かつて大手出版社の文芸編集者として活躍した澤登志夫。激しい恋愛の果てに48歳の時に妻子と別れ、後悔を覚えつつも、笑い飛ばして生きてきた。

 澤は定年退職したあと、カルチャーセンターで小説講座をもち、週3回小説の書き方を教えてきたが、腎細胞がんが見つかり手術。3年後、腰椎に転移性のがんが見つかり、講座の終了をきめ、自分の死をいかに迎えるかについて考えを巡らすようになる。

 そんな澤に、彼を崇拝する小説講座の受講生、宮島樹里が近付いてくる。

 澤登志夫69歳、樹里26歳。恋愛小説の名手の小池なので年の差を超えた恋愛を描くと思うかもしれないが、精神的な繋(つな)がりを丁寧に捉えていくだけである。しかしこれがとても魅力的だ。樹里の書いた小説、彼女が抱える家族の深い闇、過去の性的体験が、そのまま澤自身のモノトーンの人生を鮮やかに照らすことになるからである。付き合いがなくなった娘への思い、不倫と不倫相手の思いがけない死などを語らせて、澤の孤独な内面を厳しくも切実に浮かび上がらせていく。

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