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【湯浅博の世界読解】「1984年」は全体主義の陰鬱な世界描く 文書改竄に結びつけるのは拡大解釈だ

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【湯浅博の世界読解】
「1984年」は全体主義の陰鬱な世界描く 文書改竄に結びつけるのは拡大解釈だ

 英国の作家、ジョージ・オーウェルの描く小説「1984年」の舞台化と聞いて、東京・初台の新国立劇場に足を運んだ。演劇の舞台となる全体主義国家「オセアニア」は核戦争後の混乱に乗じた革命で誕生した少数独裁の社会主義国家である。

 彼の作品「カタロニア賛歌」は1936年、ファシストと闘うために内戦下のスペインにやってきた著者迫真のルポだった。続く冷戦初期の49年に、共産主義の倒錯した世界を告発したのが未来小説「1984年」である。

 2つの作品を読んだのは、新左翼による70年安保反対闘争の時期だから、共産主義批判派としてはこの小説に納得させられた。オーウェルは作品を通して、左右の全体主義と闘っていたからだ。

 ところが、上演中の演劇作品「1984年」の論評の一つは、「今の日本の状況をも連想させるものがある」と批判の矢を内に向けていた。別のコラムも、「思い起こした『一九八四年』」などと、財務省文書の改竄(かいざん)問題に結び付けていた(朝日3月18日付)。どうやら主人公ウィンストンが真実省記録局に勤務し、独裁者の都合に沿って過去の新聞記事を改変する作業をしていたことから拡大解釈したようだ。

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