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地雷か埋蔵金か 非上場株の二面性に迫る金融経済小説「少数株主」

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地雷か埋蔵金か 非上場株の二面性に迫る金融経済小説「少数株主」

「少数株主」牛島信著 「少数株主」牛島信著

 企業のM&Aやコーポレート・ガバナンス、株主代表訴訟などの分野で活躍をし続けている日本を代表する弁護士・牛島信氏。「ビジネス・ロー・ノベル」というジャンルを切り開いた人気作家でもある。さらに、多くの企業の社外取締役・監査役を歴任し、現在は社外取締役人材の育成と人的ネットワークを目的とするNPO法人日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークの理事長を務めている。「少数株主」は、そんなコーポレート・ガバナンスのスペシャリストである牛島氏による期待の最新作だ。日本の株式会社のほとんどを占める「非上場会社」にまつわる、株の盲点や経営の問題点に迫る。

46.5万円の配当しかない株の相続に1億円の税金

 日本の株式会社のうち、99.8%は「非上場」で、「非上場」の株式会社では、オーナー経営者やその一族が株式を大量保有する“大株主”であることが多い。大株主以外がいわゆる“少数株主”だ。本書に登場するオーナー経営者たちは、会社負担で贅沢をしたり、過度な報酬を家族に与えたりと公私混同を繰り返す。こういった非上場会社の経営は、大株主であるオーナー経営者の思いのままで、コーポレートガバナンス(企業統治)が機能しなくなっているというわけだ。

 一方で、経営に関与できない “少数株主”がいる。その多くはわずかな配当を受け取っている程度だが、その少数株が悲劇を生むことがある。株は相続時に持株割合に応じて、配当の金額や額面だけでなく、会社の資産や利益も加味して評価される。その結果、株の評価額が一気に跳ね上がり、とても払えない額の相続税がふりかかってくるおそれがある。

 本書でも紹介される衝撃的な実例がある。蚊取り線香で有名なキンチョーこと大日本除虫菊の株0.49%(465万円相当)を、祖母から相続した男性がいた。男性がもともと持っていた4.99%と合わせて、持株割合は5.48%になる。税務署は持株割合が5%を超えると「経営に影響がある」として、株の評価方法を変える。その結果、税務署は、男性が465万円と思って申告した株を1億6000万円と評価し、1億円もの相続税を課したのだ。

 わずかな株を相続しただけにも関わらず、巨額の納税を迫られる。このエピソードから「少数株主」のストーリーは幕を開ける。

「まるで地雷の上で暮らしているようなものじゃないか」

 「少数株主」では、弁護士の大木と資産家の高野、2人の男を通して物語が紡がれていく。

 ある日、知り合いから非上場株の買い取りを頼まれた高野は、顧問弁護士の大木に相談を持ちかける。しかし、「非上場株は自由に売れない。それどころか、キンチョーのような相続税のリスクをはらんでいる」ことを、大木の説明で知る高野。そんな非上場株を高野は“地雷”と表現した。

 日本では、非上場株を売りたい相手に売却するためには会社の承認が必要である。会社は知らない者が株主になるのを防ぐことができるようになっている。つまり、会社は、株を売却するのは良いが、会社が指定する者に売却するようにと指定できるのだ。非上場株を買おうと思っても、会社の承認がないと買えないのである。これは、会社の経営を安定させるためのルールだが、大株主のオーナー経営者にとっては非常に強固な防護壁、少数株主から見れば非常にやっかいな縛りだと、大木は説明する。配当が少ないうえに、次に売れるかわからない、上場することもない、そんな紙くず同然の株は買い手が見つからないのが現実だという。

 では少数株主は、地雷を抱えたまま虐げられるしかないのか。非上場会社の株を手放す方法はないのか。大木とともに少数株主の救済に挑む高野は、少数株を売るための新たなスキームをつくりだす。さらに「凍りつき、放置されている非上場同族会社の株が動きだせば、日本経済は瞬く間に復活する」と突き進むのだが・・・。

 日本の非上場会社の内部留保は150兆円にのぼる。非上場同族会社の少数株は、気づかなければ暴発してしまう“地雷”なのか、それとも日本再興に向けた“埋蔵金”になるのか。少数株主でない人も必読の一冊と言える。

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(提供 株式会社幻冬舎)

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