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【書評】『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』 代表的作家7人の物語世界

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【書評】
『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』 代表的作家7人の物語世界

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』 『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』

 遺伝子改造鼠(ねずみ)と駆除部隊として派遣された学生たちの戦いが凄惨(せいさん)な陳楸帆(チェンチウファン)の「鼠年」、幽霊の街で暮らす少年の出生の秘密が切ない夏笳(シアジア)の「百鬼夜行街」、当局が定めた健全語しか話せない超検閲国家が恐ろしい馬伯庸(マーボーヨン)の「沈黙都市」…。

 『折りたたみ北京』は現代中国SFを代表する7人の作家の13編を収めたアンソロジーだ。編者は『紙の動物園』が日本でも高く評価されているケン・リュウ。文学賞の受賞作や翻訳して内容が伝わりやすいものを優先して選んだというだけあって、どの作品もすんなり物語の世界へ入っていける。

 ヒューゴー賞を受賞した表題作の舞台は、貧富の差によって三層に分割された北京。24時間ごとに地面が回転し、建物を空間に折りたたんで、表に出るスペースが交代する。階層間は自由に行き来できない。最下層の第三スペースのごみ処理施設で働く男は、危険を冒して第一スペースへ行く。

 夜しかない街で生まれ育った男が、最上層に到着して日の出の光景を眺めるくだりが美しい。

 残酷な格差社会を描きつつ、弱者に向ける眼差(まなざ)しには温かさを感じる一編だ。著者の●景芳(ハオ・ジンファン)の長編『一九八四に生まれて』も読みたくなってしまう。

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