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【書評倶楽部】興福寺貫首・多川俊映 浮かび上がる「奈良時代」『光明皇后 平城京にかけた夢と祈り』

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興福寺貫首・多川俊映 浮かび上がる「奈良時代」『光明皇后 平城京にかけた夢と祈り』

多川興福寺貫首 多川興福寺貫首

 私が住持する奈良・興福寺では、平成10年から、境内の史跡整備を進めている。その当面の眼目が中金堂の再建で、来る10月7日に落慶の運びになっている。

 中金堂は、享保2(1717)年に焼失したから、まさに300年ぶりの再建だ。興福寺の再建は、いつの時代も「天平回帰」がテーマだったから、私たちの境内整備事業も、「天平の文化空間の再構成」が合言葉である。だから当然、天平という時代が気になるし、天平時代を築いた人々も大いに気になる。

 そうしたなか、1人か2人にしぼって選ぶのははなはだ難しいが、私にとっては、藤原不比等と、その娘の光明皇后ということになる。この点、練達の古代史家による本書は、天平時代をイメージする上で最適のテキストではないかと思う。

 本書では、多くの通説に疑義を呈し、小気味よく自説を展開して読者を啓蒙(けいもう)しているが、その切り口は、「肉親の死」だ。こうした切り口というか視点は、著者自身も述べているように「おそらくだれも試みなかった視点であり、光明子の実像と虚像が明らかになるだけでなく、これまで見過ごされてきた奈良時代のさまざまな諸相が浮かび上がってくるに違いない」という確信に導かれて、全編を構成し論述している。

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