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【新・仕事の周辺】宮坂静生(俳人) 金子兜太の優しさ

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【新・仕事の周辺】
宮坂静生(俳人) 金子兜太の優しさ

現代俳句協会創立70周年記念大会での金子兜太さん(手前)と筆者=平成29年11月23日、東京・内幸町 現代俳句協会創立70周年記念大会での金子兜太さん(手前)と筆者=平成29年11月23日、東京・内幸町

 2月20日、金子兜太(とうた)さんが98歳で亡くなった。近年、兜太さんとの縁(えにし)を感じることが多かった。

 昨年11月23日、勤労感謝の日に帝国ホテルで開かれた現代俳句協会創立70周年記念大会は名誉会長・金子兜太さんの長寿のお祝いの会のようであった。

 兜太さんは17年間、協会の会長を務め、おのずからシンボル的存在であった。当日は特別功労者表彰状を差し上げた。兜太さん最良の日。そこで突如、唄(うた)うかといって、秩父音頭を唄われた。

 「秋蚕(あきご)仕舞うて麦まき終えて 秩父ナアー 秩父夜祭待つばかり」

 喉から声をしぼり出すように、懸命に唄われた。絶唱であった。

 記念大会のしばらく前に、私は『季語体系の背景 地貌季語(ちぼうきご)探訪』という本を出した。各地に残る季節のことばを「地貌季語」と名付けて蒐集(しゅうしゅう)し、大切さを喚起した本である。例えば、「どんぐい」(北海道での虎杖(いたどり)の呼称)や「桜隠し」(新潟県の地域での桜時の雪の方言)など。兜太さんに本の帯文を書いて貰(もら)った。

 産土(うぶすな)を見つめ愛着ある土地のことばを探ることで真実の日本がわかるとある。わが意を得たうれしいことばであったが、これは兜太さんの十八番(おはこ)の秩父音頭に通じる、ご自分が句作を通し求めている思いでもあったのであろう。

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