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【書評】映画批評家、高崎俊夫が読む『私が愛した映画たち』吉永小百合著、立花珠樹取材・構成

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【書評】
映画批評家、高崎俊夫が読む『私が愛した映画たち』吉永小百合著、立花珠樹取材・構成

『私が愛した映画たち』吉永小百合著、立花珠樹取材・構成 『私が愛した映画たち』吉永小百合著、立花珠樹取材・構成

 ■黄金期の残り香放ち続ける

 敗戦の年に生まれ、日本映画黄金期に日活に入社、120本の作品に出演し、舞台経験のない吉永小百合は、まさに生粋の〈最後の映画女優〉と呼ぶにふさわしい。本書は吉永小百合が自選した15本の作品を中心に、60年にわたる映画人生を語ったメモワールである。

 吉永はデビュー間もなく生涯を決する運命の一作に出会ってしまう。浦山桐郎監督の「キューポラのある街」である。この名作で彼女が演じた戦後社会の貧しさの中でひたむきに生きる健気(けなげ)なヒロインは普遍的な典型にまで高められ、高度成長期の希望のシンボルのごとき存在になった。

 そして、原作に感動し自ら映画化を希望した「愛と死をみつめて」は空前の大ヒットとなり、斜陽化し始めた日活の屋台骨を支える文字通りの救世主となったのである。

 蔵原惟繕監督の「愛と死の記録」は被爆者である青年との恋愛を描く悲劇だが、ラッシュ(仮編集フィルム)を見た上層部から広島のドームを象徴的に映した場面と被爆した女性の顔のケロイドの場面のカットを命じられ、猛烈に抗議するくだりがある。後年、吉永のライフワークとなる原爆詩の朗読は、この映画での悔恨に満ちた体験が原点にあることは間違いない。

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