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【温故地震】東日本大震災(2011年) 津波と決別した田老地区 都司嘉宣

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【温故地震】
東日本大震災(2011年) 津波と決別した田老地区 都司嘉宣

丘陵を整地して作った岩手県宮古市田老地区の新市街地。右奥は旧市街地=2017年11月(都司嘉宣氏撮影) 丘陵を整地して作った岩手県宮古市田老地区の新市街地。右奥は旧市街地=2017年11月(都司嘉宣氏撮影)

 震災後、地区では復興計画が検討された。この被害を教訓に、新たな街をどうするかだ。土盛りを行うことによって市街地の高さをかさ上げし、将来の津波被害を軽減する案と、もともとの市街地の背後にある丘陵を整地して宅地造成し、市街地全体を高所に移転するという案が話し合われた。

 慎重な議論の末、選ばれたのは高所移転案で、丘陵の整地作業が始まった。筆者は2011年から毎年、造成地を訪れているが、市街地整備は16年までに完了した。17年秋に訪れた際には、新市街地の大部分の区画で新しい家屋の建設が終わっており、実に感慨深く感じた。

 新市街地は三王地区と呼ばれ、入り口に当たる一番高さが低い地点でも、標高は30メートルを超えている。さすがにここまで標高が高ければ、田老地区の市街地は永久に、津波に襲われる心配はないだろう。

 海に近く標高が低い旧市街地は、全く何もなくなったわけではないが、高齢者や幼児を含む家族が寝起きする住宅はない。あるのはガソリンスタンドやコンビニエンスストア、水産加工場、野球場など、万一のときにすぐ高台へ避難できるような人が働いたり集まったりする施設ばかりだ。

 丘陵上に新市街地を造り上げることは、大変な費用と苦労を要したと思う。だが、現住民とその子孫のため津波被害との決別を選んだ英断に敬意を表したい。(つじ・よしのぶ 建築研究所特別客員研究員=歴史地震・津波学)

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