産経ニュース

【明治の50冊】(9)二葉亭四迷「浮雲」 苦悩描き、近代小説の原動力に

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【明治の50冊】
(9)二葉亭四迷「浮雲」 苦悩描き、近代小説の原動力に

『浮雲』(第二編)表紙。二葉亭は当時無名だったため、坪内逍遥(雄蔵)名義で出版された 『浮雲』(第二編)表紙。二葉亭は当時無名だったため、坪内逍遥(雄蔵)名義で出版された

 3人の言動と、それに右往左往する文三の様子が、言文一致の文体と精緻な写実主義によりリアル、鮮やかに描かれ、近代小説の先駆けとされる作品だ。

 森鴎外は後に、「小説の筆が心理的方面に動き出したのは、日本ではあれが始であらう。あの時代にあんなものを書いたのには驚かざることを得ない」、正宗白鳥も「これは単なる青春詠嘆の書ではない。(中略)当時の社会相が、多少の稚気があつても、そこに活写されてゐる」と評した。

 折しも、18~19年の官制改革や学校改革など、憲法発布を控えて国家体制が整っていく一方、維新以来のさまざまな矛盾が表面化する時期。二葉亭の「作家苦心談」(30年)、「予が半生の懺悔(ざんげ)」(41年)によれば、『浮雲』には「官尊民卑への反発」「青年男女の傾向」「新旧思想の衝突」「知識階級の苦悩」「日本文明の裏面」といったテーマが込められていた。

 早稲田大の中島国彦名誉教授(日本近代文学)は「文学史的な意味合いだけでなく、いろいろなことを教えてくれる。模索そのものも大きなテーマで、二葉亭自身が文字どおり模索し、試みた。彼がこの作品に注いだ思いが、近代小説を後に支える原動力になった」とみる。そのうえで「時代や人間の可能性、あり方、幅を考えるときに役立つ」と後世に与える意義を強調する。

続きを読む

このニュースの写真

  • (9)二葉亭四迷「浮雲」 苦悩描き、近代小説の原動力に

関連ニュース

「ライフ」のランキング