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【書評】文芸評論家・富岡幸一郎が読む『死の貌(かたち) 三島由紀夫の真実』(西法太郎著) 生と文学追う瞠目の研究書

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【書評】
文芸評論家・富岡幸一郎が読む『死の貌(かたち) 三島由紀夫の真実』(西法太郎著) 生と文学追う瞠目の研究書

「死の貌 三島由紀夫の真実」 「死の貌 三島由紀夫の真実」

 昭和45年11月25日、三島由紀夫は自らが主宰する「楯の会」の会員とともに市ケ谷の陸上自衛隊に入り、隊員を前に憲法改正を訴え、直後割腹自決を遂げた。あの衝撃的な事件からすでに48年近い歳月が流れたが、三島についての本は毎年のように新たに刊行されている。

 本書の著者は当時中学生であったという。遺作『豊饒(ほうじょう)の海』を高校生の時に手にして辞書を引きながら読みおえ、「作家の自死の衝撃が消えずぎゃくにその波紋がひたひたひろがっていった」。評者も同世代の一人としてほとんど同じ三島体験を味わった。切腹と介錯(かいしゃく)という壮烈な死。遺(のこ)された厖大(ぼうだい)な文学の華麗なたおやかな言葉の世界。死と文学。武と文。45年という短い生涯を、天賦の才をほしいままにして疾走した文学者。三島の生と文学を追いかけていくことは、畢竟(ひっきょう)「作家の死の貌」を探究することになる。

 長年のその作品の読み解きを、著者は神風連の熊本や奈良の帯解(おびとけ)三輪桜井など各地を巡り、事件の裁判記録や資料にあたり、また作家と生前交流のあった人々や研究者らの取材をふくめて総合的に、立体的に展開してみせる。

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