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360度の世界は、もっと自由になっていく

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360度の世界は、もっと自由になっていく

 リコーの全天球型カメラ「RICOH THETA(リコー・シータ)」(以下 THETA)は、カメラの周囲360度を静止画や動画に収めることができる。本紙でフォトコラム「旅と美」を連載中のアートプロデューサー、エッセイストの白洲信哉氏は約2年間、「THETA S」を使い続けてきた。また、映画監督、脚本家、映画プロデューサーの太一氏は、最新機種の「THETA V」を使い、ウェブサイト「産経フォト」で動画コラム【太一「諦めるほど大人じゃない」360度VR動画】を連載中だ。今回、この二人が「THETA」をテーマに対談。「THETA」の活用法や、今後の可能性などについて語った。

実験的なことを製品化する

白洲信哉氏 白洲信哉氏

 白洲信哉さん(以下白洲) 最新機種の「THETA V」は動画の映像がすごくいいとか、360度の方向から音が聞こえるとか、機械自体が進化していて、使いきれないほどの機能がある。言葉だけ聞いてもまったく分からないんだけど、僕ぐらいの人がそれをやったとしても、入り口から無理なわけですよ。知らなさ加減が尋常じゃないから。でも1回スイッチを押すことは一緒。「THETA」を使って、壺の中の写真を撮ったんですけど、器って外側を見るじゃないですか。でも焼き物を作っている人に聞いてみると、中を7~8割作ったら、外は自然とできてくるというんです。ろくろ目といって、裏側は薬をかけていないので、ろくろを引いた跡がよく見えるんです。それを撮るのは「THETA」じゃないとできない。しかも、ものすごく簡単な作業でできます。見えないところの映像が撮れるというのは、他のカメラにはない「THETA」の特徴ですね。

対談時に紹介された「李朝の白磁」や太一氏の連載は産経フォト内に開設された産経フォト×RICOH THETAで配信中 対談時に紹介された「李朝の白磁」や太一氏の連載は産経フォト内に開設された産経フォト×RICOH THETAで配信中

 太一さん(以下太一) 壺の中というのは、知識がないと撮ろうと思わないですよね。撮った理由をお聞きして、それを声で聞きたかった。あの写真に声がついていたら最高です。僕は、もともと「THETA」に興味を持って入っていったんですけど、なぜ、他のメーカーではなく「THETA」がよかったのかというと、プロカメラマンが使っているデジカメにリコーのGR※というシリーズがあって、非常に使いにくいカメラで、できないことだらけだった。ところが、その中に選び抜かれた機能だけは、どのカメラよりも良かった。この、プロしか使いこなせないような使いにくいカメラが生み出した作品は非常に上質で、その会社が作ったのが「THETA」だった。「THETA」っていうのは、カメラだけの良さを見ても今一つ、見えない部分があるんです。他にも、世界中のたくさんのメーカーがVRカメラを出しているんですけど、みんな最新型のカメラを販売している。ところが、リコーは、進化するカメラを発売した。カメラ性能だけを比べたら、他社にも似たものがあったり、もっと高画質のものがあったりするんですけど、進化するカメラは今、「THETA」しかないんです。ファームウエアでどんどん機能が変わっていき、画質まで上がってしまう。この「THETA」が見ている未来に期待して、今使い続けています。GRを生み出したリコーというのは、かなり実験的なことを製品化する実力と、それを許す社風を持っている。

※2005年に株式会社リコーから発売されている高級コンパクトカメラ。現在の最新モデルは2015年発売のGRII。

個人それぞれの違いがあるからおもしろい

太一氏 太一氏

 太一 カメラの未来の話になりますけど、最先端ではレンズが必要なくなる。光を集めて映像素子でとらえて画像にするという技術の中で、入ってくる光ではなくて、乱反射している光をとらえたものを立体物として組み上げるという技術がもうあって、それが高性能化していくと、例えば、そこの柱を撮影したときに、乱反射している空間の光がとらえられるので、柱の裏面も映るんです。そういったカメラが出てきたときに、他のメーカーさんはあわてて開発するわけですが、リコーは「THETA」を発売する前に、被写界深度拡張カメラというのを出していて、被写界深度、しぼりを後で決めることができる。パンフォーカスですべての空間がとらえられていて、ガンマ値がきっちり光の中に収まっている。人間っていうのは、光によって見ているものの色が変わってしまう。脳の中で色を再現しているだけで、真っ白な紙に黄色い光を当てれば、黄色く見えるし、青い光を当てれば青く見える。ミツバチというのは、2つの複眼の上に3つの単眼があって、5つの目を持っているんですけど、空間の光に影響されずに物体の色が見られる。被写界深度拡張カメラが進化していくと、物体の色と物体の形を同時にとらえられる。そういったものの前身をすでに製品化している。彼らは未来を見つめながら作っている。その布石が最新型の「THETA V」だと思います。

 白洲 すごい話だなぁ。正しい色が映るっておっしゃいましたけど、結局、最後に見るのは人間の目ですよね。そこはどうなんですか? 同じ赤でも人によって見え方が違いますよね。今、おっしゃったことが、実現できて色が再現できても、見る人は、画家のようによく見える目を持っている人もいれば、ボーっとしていて何も見ていない人もいるし、そこはいくらモノが進歩しても人間がついてこられないという世界ですよね。

「時間」と「空間」を思い出として持ち帰るツール

 太一 おっしゃる通りです。自動運転はまだ精度が危ないとかいわれています。しかし近所のスーパーで買い物をしていてドンとぶつかる事故がおこる、その精度は運転している個人の視力と個人の認知力頼りなんです。それに対して、人工知能はまず、世界標準を作り上げ、そこから上には進化しかない。この精度の向上と個人にゆだねられる現実とを比べたらどうか。一つには視力。われわれが見ている物体は個人によって色が違う。みんなの中のホワイトバランスを決定することができるのは、もうちょっと先です。例えば、メガネは眼球の精度を上げるために存在しているんですけど、今、「THETA」で撮った画像を最上級の状況で見るためのツールが他社から発表されています。それはスマートグラスで、目に見えるものを作るのではなくて、レーザーで網膜に映すんです。だから視力は関係ない。網膜に映ったもののホワイトバランスを均一化していくと同じものが見られるようになる。もう一つは脳の判断力。これも人によってまちまちですよね。人間が作った人工知能が人間の知能を追い越す瞬間をテクノロジカル・シンギュラリティー(技術的特異点)といいますけど、人類が最後に作る発明品だといわれているその人工知能が誕生したときに、この人工知能が次の人工知能を作る。これはもう、人間には作れないものが誕生する。この瞬間が、孫(正義)さんは今年だと言っているし、今までは2045年だと言われてきた。それを超えた瞬間、人工知能が持っている知識の中にホワイトバランスを設定し、人間の脳の判断はこれを基準にする。網膜に映したものを調整していくことで同じものが見えるようになる。それがリコーの向かっていくすぐ目の前にある。ただ、太一という職人からすると、すごくつまらないなぁと思ってみています。個人それぞれの違いがあるからこそおもしろい。産経さんがこの「THETA」を白洲さんと太一というフィールドのまったく違う二人に持たせて、「使い方は自由だ」っていうのは、チャレンジというか、実は、壮大な人体実験なんじゃないかと(笑)。

 白洲 いやまあ、ものすごくよくわかっている人とそうでない人と、両極を見た方が進む速度が速いと思ったんじゃないですか? 真ん中を見ていてもしようがないんで…。

 太一 きっと、これは対談じゃなくて、開発のためのデータ取りなんですよ(笑)。今まで、白洲さんみたいな人がちゃんとした作品を撮られてきたカメラというのは、機材の使い手である写真家の技術に左右されてきましたけど、「THETA」は一番、考えなくていい使い方がふさわしいと思いますね。「THETA」が撮るものは時間と空間で、考えるよりは、この時間を後で思い出したいとか、この空間を残しておきたいというときに使うものなので、ムービーとかカメラという意識を度外視して、メモ、もしくは思い出として、空間を持ち帰るためのツールだと思います。

映像と音声に変えたら、まるっきり違うことが起きる

「THETA V」を手にとり向上した性能を確かめる 「THETA V」を手にとり向上した性能を確かめる

 白洲 祭りには必ず音がありますからね。東大寺の修二会、一般には「お水取り」で知られる行があって、二月堂の中で約2週間やるんですけど、それを「THETA」で撮ったら、見たこともないような相当、違うことが起こりますよ。天平時代からずっと続いている日誌があって、これを映像や音声に変えたら、まるっきり違うことが起こり得ますよね。これは「THETA」にしかできないことです。

 太一 他社のVRカメラも使いましたが、「THETA」は安定性が圧倒的に良くて、ハードとソフトのバランスが絶妙なんです。ハイエンドの高画質カメラはいっぱいあるんですが、他のカメラマンたちも「THETA」を買っている。ハイエンドなものは、夢とか希望みたいなものなんですが、「THETA」はコンシューマーに対して提供していく現実的な価格、現実的なクオリティー、さらには、それが進化していく未来という全部を用意している。夢と現実、この2つが合わさって作品が生まれると思ったとき、「THETA」がどこの国の商品だったとしても使っていると思いますね。持ち歩くにしても、サイズ感がいいし、価格もいい。なおかつ安定していて壊れにくい。また、万が一、現場でいい環境が用意できなくても、それを持ち帰って修整できる。今後、「THETA」に期待したいのは、もう、ハードがしっかりしているのは分かったので、ソフトを際限なく進化させてほしいですね。

【プロフィル】白洲信哉 しらす・しんや 1965年、東京都生まれ。細川護煕元首相の公設秘書を経て、執筆活動に入る。アートプロデューサー、エッセイスト。祖父は吉田茂元首相の側近として活躍した白洲次郎、祖母は随筆家の白洲正子。母方の祖父は文芸評論家の小林秀雄。『朱漆「根来」~中世に咲いた華~』(目の眼刊)、『骨董あそび 日本の美を生きる』(文芸春秋刊)など、多くの著作あり。

【プロフィル】太一 たいち 1971年、東京都生まれ。1984年にSFXアーティストとして映画業界デビュー。1992年、映像制作会社A.T-ILLUSIONを設立し、数多くのCM、劇場映画、MPV、テレビドラマのVFX映像を手掛ける。1998年、 3D大型映画『Pandora』(主演:工藤夕貴)で監督デビュー。2010年、エンターテインメント・プロダクション「EDLEAD inc.」をアメリカ・ラスベガスに設立。映画プロデューサーの恵水 流生と共に2016年、実写VR.映画等の国際映像スタジオ「NOMA」を創設。2017年から産経フォトで「THETA」を使った短編VR動画『諦めるほど大人じゃない』を連載中。

(提供 株式会社リコー)

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