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【書評】文化部・桑原聡が読む『情熱の哲学 ウナムーノと「生」の闘い』佐々木孝著、執行草舟監修 人間本来の生とは? 乾いた世界にあらがう

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【書評】
文化部・桑原聡が読む『情熱の哲学 ウナムーノと「生」の闘い』佐々木孝著、執行草舟監修 人間本来の生とは? 乾いた世界にあらがう

『情熱の哲学 ウナムーノと「生」の闘い』佐々木孝著、執行草舟監修 『情熱の哲学 ウナムーノと「生」の闘い』佐々木孝著、執行草舟監修

 ミゲル・デ・ウナムーノとは何者か? 1864年に生まれ、1936年に亡くなったスペインの哲学者・詩人である。スペイン最古のサラマンカ大学の総長も務めた。

 1588年に無敵艦隊がイギリスに敗れ、凋落(ちょうらく)の一途をたどっていたスペインは、1898年にアメリカとの戦争に敗北して海外植民地のほとんどを失う。近代化の遅れが原因なのは明らかだった。当然のように国内では近代化論争が起こる。誰もが「バスに乗り遅れるな」と叫ぶ中で、彼は「発明は彼らにまかせておけ!」と言い放つ。「彼ら」とは科学文明の進んだ英米独仏のことだ。自分たちにはそれより大切な使命があると彼は考えた。「使命」とは、人間本来の生について思索することだ。神の代わりに理性を信仰する近代人は科学文明を生み出し、生活を快適にしていったが、まもなく科学文明が人間の生を支配するようになる。彼はこれに徹底的にあらがうのである。

 本書はそんなウナムーノの最高の入門書である。41年前に講談社現代新書の一冊として世に出たが、まもなく絶版となった。ウナムーノの思想が自身の血となり肉となったと信ずる著述家の執行草舟氏が、著者の佐々木孝氏と「ウナムーノ著作集」全5巻を出していた法政大学出版局にかけあって復刊にこぎ着けた。

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