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【書評倶楽部】ノンフィクション作家・河合香織 『極夜行』角幡唯介著 闇と光の深淵見つめた記録

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ノンフィクション作家・河合香織 『極夜行』角幡唯介著 闇と光の深淵見つめた記録

ノンフィクション作家の河合香織さん ノンフィクション作家の河合香織さん

 「太陽から来たのか、月から来たのか--。」 200年前にグリーンランド北西部で、原住民のイヌイットが英国の探検隊に出会ったときに発した言葉。その意味に惹(ひ)きつけられた著者は、かくまでに隔絶された最北の村、そして世界で一番暗い村シオラパルクを目指す。地球上には極夜(きょくや)という、一日中太陽が昇らず暗闇に閉ざされた時間が数カ月も続く地があった。

 その村から犬ぞりを引いて、氷に閉ざされた極夜世界を一人彷徨(さまよ)うことになる。システムの外側の領域に出ることこそが探検だと考え、地理的な到達点ではなく、極夜の世界に長期にわたって身を置いて、視界情報を奪われた闇の深淵(しんえん)を見つめた記録である。

 何カ月もかけ犬ぞりとカヤックで運んだ物資は白熊に荒らされ、ほとんど残っておらず、GPSを持たない著者が頼りにしていた天測用の六分儀も失ってしまう。食料を補給するために、暗闇で狐(きつね)を、狼(おおかみ)を、兎(うさぎ)を、撃って生き延びた。相棒の犬を何としてでも死なせたくないと思う一方、この犬を食べたらどれだけ生き延びられるかを計算する。欺瞞(ぎまん)なしの本性が剥(む)き出しになっていくさまを射抜く視点に強力に惹き込まれていく。

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