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【書評】大川小学校の悲劇を英国人ジャーナリストが描く 『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』

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【書評】
大川小学校の悲劇を英国人ジャーナリストが描く 『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』

『津波の霊たち3・11死と生の物語』リチャード・ロイド・パリー著、濱野大道訳(早川書房・1800円+税) 『津波の霊たち3・11死と生の物語』リチャード・ロイド・パリー著、濱野大道訳(早川書房・1800円+税)

 英国人ジャーナリストによる渾身(こんしん)のノンフィクションだ。筆致は精緻で叙情性に富み、文学の域に達している。

 描かれているのは、東日本大震災のとき、市役所の広報車の津波警告を教師たちが無視したために、校舎にいた児童のほとんどが犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校の悲劇である。

 もともと英語で書かれた本だが、著者が参照した資料をもとに正確な日本語に訳されており、2人の児童が教師に対して言った「先生、山さ上がっぺ」「おれたち、ここにいたら死ぬべや!」といった言葉も忠実に記されている。

 津波に遭遇した児童や彼らの保護者らの当時の状況は、眼前で展開するCG映像のように再現され、読者は恐怖と寒さを追体験させられる。

 本書の特質は、一つの事件を通して東日本大震災の全体像のみならず、日本人の本質と日本社会の現実を描き出していることだ。

 津波が襲った翌日、誰かに命じられることもなく、泥と悪臭の中で児童たちの遺体を掘り出し、並べ、川から濁り水を汲(く)んで遺体を洗う地元の人々や、震災後、巨大なショベルカーを操作する免許をとり、自分の娘の遺体を見つけたあとも、行方不明の児童たちを探し続ける中学校の女性教師の姿は神々しい。

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