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【編集者のおすすめ】『「中国」という神話』楊海英著 「強国」を仕立てる習近平の手口を暴く

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『「中国」という神話』楊海英著 「強国」を仕立てる習近平の手口を暴く

 「日本列島から見ると、中国は巨大な帝国でしょう。でも、ユーラシア大陸から見ると、中国はそのごく一部でしかない。万里の長城の内側で、北方や内陸アジアを恐れてきたのが中国の歴史なのです」

 本書の著者、楊海英さんの何げない一言で、頭の中の世界地図がぐるっと回転したように感じられた。

 モンゴル出身の文化人類学者である楊さんは『墓標なき草原 内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(岩波書店)で司馬遼太郎賞、『チベットに舞う日本刀 モンゴル騎兵の現代史』(文芸春秋)で樫山純三賞を受賞するなど、内陸アジアの民族の運命を描いた著作で高い評価を得ている。幼少期に見聞した、中国共産党による民族弾圧が深く心に刻まれていると語る楊さんだが、その歴史へのまなざしは平静で、広い。

 昨年の党大会で、習近平・共産党総書記は「中華民族の偉大なる復興」を高らかに宣言した。しかし一帯一路政策の舞台・内陸アジアこそ、中国の支配に最も激しく抵抗する「民族問題の火薬庫」。もともと内陸アジアは「中国」の一部などではなく、しばしば中国を支配してきた歴史を持つ。それを強引に「自国の一部」とみなすことで、中国は自らを「偉大な強国」に仕立ててきたのだ。

 本書はその神話作りの手口を暴きつつ、「偉大なる中華民族」という虚構にしがみつく限り、中国は民族問題を解決できない、と喝破する。「ユーラシアから見た中国」は、多くの日本人の中国観を一変させる力があるだろう。(文春新書・880円+税)

 文春新書編集部 前島篤志

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