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「会田誠展」 社会の閉塞感ぶち破れ! アーティストの誇大妄想的な言葉とイメージで

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「会田誠展」 社会の閉塞感ぶち破れ! アーティストの誇大妄想的な言葉とイメージで

「新宿御苑大改造計画」とそのジオラマ 「新宿御苑大改造計画」とそのジオラマ

 平昌五輪をテレビで見ながら、東京オリンピック・パラリンピックまでいよいよ2年かと改めて認識するものの、なぜだろう、前向きな気分が一向にわき上がってこない。現代美術家の会田誠(52)は言う。「(五輪に対し)ポジティブになろう、なろうとすることが、余計暗くさせるところがあると思うんですよ」。政治家でも役人でも都市計画家でもない、アーティストの会田が「都市のあり方」をテーマに東京を、日本を考える個展を開いている。ぶっ飛んでいるが、真面目で刺激的な展覧会だ。(黒沢綾子)

                   

 東京都港区の青山クリスタルビルで開催中の「会田誠展 GROUND NO PLAN(グラウンド ノー プラン)」。会田は美少女、暴力や戦争、政治などをモチーフに現代社会を鮮やかに批評する作品で知られるが、都市計画に関するものに「新宿御苑大改造計画」(平成13年)がある。

 黒板にびっしり描いたプランの詳細とともに、今回はジオラマも展示。山と渓谷を作り、固有種の動物と植物を優先させ、建造物にはコンクリートや金属など人工素材を禁じる。魅力的な公園に乏しい東京の問題を解決すべく、御苑をより自然に近い都会の森にしようという思考実験だ。

 東京を考えるとき、大友克洋の名作漫画「AKIRA」に出てくるような崩壊のイメージ、戦後日本に継承されてきたであろう廃虚のイメージに強く影響されると会田は明かす。ビルの地下1、2階を使った会場には絵画や映像、模型、膨大な量のテキストなど、多種多様な作品がカオス的に配されている。ありとあらゆる危機が迫る現実に対し、会田は「新しいものを作るったってタカが知れてる」「暗澹(あんたん)たる未来しか思い浮かばない」と悲観したかと思えば、「やっぱりバカなことを考えたい」と楽観に向かう。そんな美術家自身の揺れや葛藤が展示に生々しく表れている。

 林立する無個性なビジネスビルに、サラリーマンの象徴であるネクタイを重ねた日本の典型的イメージ。それをぶち破るように「発展途上国から始めよう」とヤケクソ半分、本気半分のスローガンが見える。「オリンピックがまた東京に来ますけど、『一つになろう』とか『1964年東京五輪の活気を再び』とか、がんばっちゃうと失敗しそうで。『裸一貫から!』みたいな方が“次”が見える…かもしれない」

 提案は続く。「快適なスラム」という矛盾に満ちた、魅力的な住まい。限界集落で無人化しつつある半島を人間の生活圏と切り離し、ニホンオオカミ復活をはかる仰天プラン…。暴論と片付けることもできるが、鋭い現実認識に根ざしているのも確かだ。

 同展は大林財団の新助成プログラム「都市のヴィジョン」の一環。2年に1度、国内外からアーティストを選び、建築的視点とは異なる発想で自由に都市について考察、提言してもらうというもの。

 加えて、会田は同展にもう一つのテーマを潜ませたそうだ。それは、社会問題に積極的に関わったヨーゼフ・ボイス(独、1921~86年)のようなアーティストの是非について。「アーティストが世のため人のためと考え行動することが、本当に世のためになるのか」。社会的発言がSNSで炎上しがちな時代、アーティストも自らの表現について自問自答している。

 それでも同展を見て思う。社会の閉塞(へいそく)感を打破するのはむしろ、アーティストの誇大妄想的な言葉でありイメージではないか、と。

                   

 24日まで。問い合わせは大林財団事務局(電)03・3546・7581。無料。

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