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井伏鱒二さん“幻の短編小説”確認

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井伏鱒二さん“幻の短編小説”確認

 「黒い雨」や「山椒魚」で知られる作家の井伏鱒二さん(1898~1993年)が戦争末期、疎開先の山梨県で執筆したとみられる全集未収録の“幻の短編小説”が、上海で当時刊行されていた日本語雑誌「大陸」に掲載されていたことが、分かった。日本文学研究者で北京外国語大教授の秦剛さんが北京の中国国家図書館で同誌を見つけ、掲載を確認した。

 同誌は日本の国立国会図書館にも収蔵されていない。確認された井伏作品は「大陸」の昭和19年12月号掲載の短編小説「饒舌老人と語る」。甲運村(現・甲府市)に疎開した「私」が、犬とオオカミの交雑種「狼犬」を見ようと動物園を訪れるが「時局に即応して、他の猛獣といっしょに整理されました」と告げられる。

 秦さんは「周縁に追い出された人間と処置された動物に目を向けていて、国家体制や国策にしっかり距離を置いた作品だ」と指摘した。「大陸」掲載作品は、今年4月刊行の文芸誌「早稲田文学」に掲載される予定。

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