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【書評】新潟県立大教授・袴田茂樹が読む『プーチンとロシア人』木村汎著 「オランダ病」、進まぬ経済近代化…ロシアの裏を詳述

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【書評】
新潟県立大教授・袴田茂樹が読む『プーチンとロシア人』木村汎著 「オランダ病」、進まぬ経済近代化…ロシアの裏を詳述

『プーチンとロシア人』木村汎著 『プーチンとロシア人』木村汎著

 本書は、80歳の著者が1980年に出版した処女作を改訂したものだ。改訂と言えないほど大幅に加筆したが、当時書いた部分のほとんどは現在なお有効、との自信を示している。共産党独裁のソ連と現在のプーチンのロシアは体制も国家理念も異なるが、数十年前に書いたソ連論につき、今こう自信をもって言えるロシア研究者はそういない。著者がこう言える最大の理由は、その研究方法にある。

 ソ連時代のロシア研究の主流は、クレムリノロジーと呼ばれる指導者の序列や、党綱領、経済政策などの分析が中心だった。現在もロシアの軍事研究と言いながら実態研究より軍事ドクトリンの分析などを中心にする研究者がいる。これに対して木村氏はロシア人の国民性論といった人間学的アプローチを、その問題点も自覚しながら、研究の中心に据えている。

 これが、数十年たっても、また体制が大きく転換しても、処女作を現代ロシア論の基礎にできる理由である。国民性とか人間性は政治経済の基礎でありながら数十年では変わらないからだ。

 著者は近年、大部の優れたプーチン論を続けて出版しており、クレムリノロジストと誤解されるが、そもそもロシア人とは何かという観点からロシアの歴史やプーチン体制の本質に迫っているのは見事だ。この意味では、ロシアについて基本的なことからしっかり理解したいという人にぜひとも薦めたい名著である。

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