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【書評】近代問い直す独自の視点 『明治の光 内村鑑三』新保祐司著

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【書評】
近代問い直す独自の視点 『明治の光 内村鑑三』新保祐司著

『明治の光 内村鑑三』新保祐司著 『明治の光 内村鑑三』新保祐司著

 新保祐司氏が力作評論『内村鑑三』を刊行して四半世紀以上がたつ。刊行の数カ月後、編集者や知人を交えて、新保氏と雑談する機会があった。流行に流されず、自己の内発的関心に根差しながら、日本の思想家を取り上げる姿勢に新鮮さと好感を持ったものだ。その折、同氏から国木田独歩の面白さを教えてもらい、その文学の造詣の深さに感服した記憶がある。

 しばしば、処女作はその著者の問題意識のすべてを含むといわれる。新保氏の評論活動にもこのことは当てはまる。氏が、偉大な日本人作曲家、信時潔を取り上げたのも、内村が信時潔の実父と昵懇(じっこん)の間柄であったことが影響している。

 本書には、これまで氏が論じきれなかった独自の視点が示されており、「日本の近代」を問い直す際のヒントが多く認められる。登場人物は富岡鉄斎から山田風太郎まで実に多士済々だ。

 明治維新150年にあたり「日本の近代」を再評価する動きが盛んであるが、忘れてならないのは、「明治初年」に日本人が精神面でいかなる変容を遂げたかという視点であろう。単に政治・経済体制の転換だけに目を奪われると、その転換のプラス面とマイナス面の功利主義的評価計算に終始してしまう。問題とすべきは、氏が指摘するように、「明治初年」までの(橋川文三の表現を借りると「旧約期」の)日本人の精神なのだ。島崎藤村『夜明け前』に子細に描かれている「復古の精神」の衰退は、この「明治初年」以降のことなのである。

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