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【書評】「論壇の崩壊」に諦念綴る 『右であれ左であれ、思想はネットでは伝わらない。』坪内祐三著

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【書評】
「論壇の崩壊」に諦念綴る 『右であれ左であれ、思想はネットでは伝わらない。』坪内祐三著

『右であれ左であれ、思想はネットでは伝わらない。』坪内祐三著 『右であれ左であれ、思想はネットでは伝わらない。』坪内祐三著

 十返肇の名著『「文壇」の崩壊』に倣えば本書のテーマは「論壇の崩壊」だ。坪内祐三はその理由を〈この国には知識人がもう殆(ほとん)ど残っていない。しかも、まったく補填(ほてん)されていない〉状況に見ている。知識人とは第1章の「戦後論壇の巨人たち」を指し、福田恆存から丸山真男まで24人を見事にスケッチ。文末には、それぞれの代表的な3冊を挙げ、目配りきいたブックガイドにもなっている。

 著者はまた、ネット社会の影響による言葉の変容も崩壊の一因に挙げる。〈何故(なぜ)なら、ツイッターの言葉には文脈がないから〉で、〈文脈のない言葉が、次々とリツイート(拡散)されて行く。……あえてデタラメをつぶやきそれがリツイートされて行くこともある〉現状に深い危機感を抱く。

 その背景には論壇を育て、支えた雑誌の衰退もある。第2、3章では近代以降の日本の論壇を形作った文芸春秋、中央公論社を代表する人物たちの肖像を豊富なエピソードを交えて描いている。しかし第5章「『戦後』のおわり」の「文春的なものと朝日的なもの」に至ると対立構造にあったはずの文春、朝日の両ジャーナリズムの失墜がある諦念をもって綴(つづ)られている。

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