産経ニュース

【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら〈18〉】小室哲哉さんの会見に思う

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら〈18〉】
小室哲哉さんの会見に思う

記者会見で引退を表明して目尻を指でぬぐう小室哲哉さん(佐藤雄彦撮影) 記者会見で引退を表明して目尻を指でぬぐう小室哲哉さん(佐藤雄彦撮影)

会話こそが外界と繋がる命綱

 すでに両親を見送った60歳の男にとって、今後の人生でもっとも恐ろしいシナリオとは、自分よりも先に妻が倒れることだ。男とは本当に身勝手な生き物だ。

 そんな関心もあったのだろう、書店で『脳が壊れた』(新潮新書)という作品に目が留まった。著者は『最貧困女子』(幻冬舎新書)など社会の最下層に生きる人々を取材したルポルタージュで知られる鈴木大介さん(44)である。

 鈴木さんは41歳のときに脳梗塞に襲われた。さいわい一命は取りとめたが、高次脳機能障害者となり、外見からは分からないさまざまな障害と怪現象に見舞われる。同書はいったい自分の脳に何が起きているのか?-と、ルポライター根性を発揮した鈴木さんが、自分の日常と身体を取材して書き上げた闘病ドキュメンタリーである。きわめて深刻な題材なのだが、障害を抱えた自分を突き放して笑えるという強靭(きょうじん)な精神に支えられているためだろう、読み手を不思議と明るい気持ちにさせてくれる。同書の巻末には、鈴木さんを支えている妻の文章がある。これがまたとてもいいのだ。

続きを読む

「ライフ」のランキング