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【書評】建築史家、東京理科大学客員教授・三宅理一が読む『リナ・ボ・バルディ ブラジルにもっとも愛された建築家』 原色の世界駆け抜けた女性

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【書評】
建築史家、東京理科大学客員教授・三宅理一が読む『リナ・ボ・バルディ ブラジルにもっとも愛された建築家』 原色の世界駆け抜けた女性

『リナ・ボ・バルディ ブラジルにもっとも愛された建築家』 『リナ・ボ・バルディ ブラジルにもっとも愛された建築家』

 心躍る一書である。主人公は、オスカー・ニーマイヤーなど鬼才を輩出するブラジル建築界にあって、そのドラマチックな経歴からもはや伝説となった異色の女性建築家、リナ・ボ・バルディ(1914~92年)。生まれはローマ、第二次大戦直後の46年にブラジルに渡り、旧世界から新大陸へのエクソドス(脱出)を果たす。

 スイス生まれのル・コルビュジエが白く輝くギリシャへの大旅行を通してモダニズムへの回心を果たしたのとは対照的に、イタリア育ちの彼女が虜(とりこ)になったのは、濃密で荒々しく原色の風景が果てしなく広がるブラジルの地。

 新大陸への移住にはそれなりの理由がある。20代を通して第二次大戦の惨禍を目の当たりにし、政治的にはファシスト・古典派・急進左派の激しい権力闘争の渦中に身を置いていた彼女にとって、戦乱とは無縁であったブラジルは「死の土地を輝かせる灯台」にも等しかった。結婚を機に美術評論家の夫、ピエトロとともに大西洋を渡り、サンパウロの美術界の重鎮たちと邂逅(かいこう)したことが、その後の彼女の活動を決定的にした。永住の拠点となる30代での自邸の設計を皮切りに、70代に至るまで設計、デザインなどにも精力的。美の範疇(はんちゅう)に収まりきらない域にまで達したサンパウロ美術館、工場のむき出しの大架構にブルータルな打ち放ちコンクリートを重ねたポンペイア文化センターなど傑作を世に送り出す。

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