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【書評倶楽部】コラムニスト・上原隆 仮構の面白さ、心理描写の妙 『くちなし』彩瀬まる著

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【書評倶楽部】
コラムニスト・上原隆 仮構の面白さ、心理描写の妙 『くちなし』彩瀬まる著

コラムニストの上原隆さん コラムニストの上原隆さん

 先月中旬、直木賞候補作品が発表された。伊吹有喜『彼方(かなた)の友へ』、門井慶喜『銀河鉄道の父』、澤田瞳子『火定(かじょう)』、藤崎彩織『ふたご』、そして本書。全候補作を読んでみた。その後、『銀河鉄道の父』が受賞となったが、私としては彩瀬まるの世界に心惹(ひ)かれている。異才だ。

 「『とにかくなにか贈らせてくれよ。なんでもいいから』『じゃあ、腕がいい』『腕? 俺の?』『うん。寝るときに撫(な)でてもらうの好きだった』」

 男は左腕の骨を肩のところで外し、皮膚を破いて、女に渡す。別れる代償だ。以後、女は腕との暮らしに満足していた。しかし…。

 本書は7つの短編から成り立っていて、その中のひとつ「くちなし」の出だしの部分だ。どの短編も淡々とした日常の中で当たり前のように異様なことが起こる。カフカや上田秋成の小説のようだ。

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