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【書評】イメージ打ち砕く様が壮観 『兼好法師 徒然草に記されなかった真実』小川剛生著

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【書評】
イメージ打ち砕く様が壮観 『兼好法師 徒然草に記されなかった真実』小川剛生著

 中学、高校の教科書を通して、あるいは受験のために『徒然草』にふれ、その作者、兼好についてなんとなくイメージを持っている人は多いだろう。

 この書を読めば、そのイメージは大きく更新され、よりシャープなものとなるにちがいない。私も、そうなった一人である。ここ60年来の兼好についての知の枠組みが、見事に打ち砕かれていく様(さま)は、壮観といってよい。

 兼好は生きていた当時の14世紀前半頃、『徒然草』の作者というより歌人として有名であった。『勅撰集』では常に「兼好法師」と呼ばれている。一方、今までの兼好伝の基本「卜部(うらべ)氏系図」では、「六位蔵人(ろくい・くろうど)、左兵衛佐(さひょうえのすけ)」とキャリアが書かれており、これが真実なら『勅撰集』では実名で表記されるはずである。そうなっていないのはなぜか…という疑問が著者の出発点であった。

 周到な考察の果てに著者は「卜部氏系図」の兼好の項は、15世紀後半に吉田神道を確立したやり手の神職、吉田兼倶(かねとも)によって、先祖に有名人を組み込むために捏造(ねつぞう)されたものだと明かす。

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