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【新・仕事の周辺】池上永一(作家) 小説のなかの料理にこだわる

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【新・仕事の周辺】
池上永一(作家) 小説のなかの料理にこだわる

池永永一さん 池永永一さん

 「ボリビア料理」といわれて、ピンとくる人はほとんどいないだろう。最初はぼくもそうだった。日本で手に入る限りの料理本の資料を集めたが、汎南米料理として取り上げている本ばかりである。たとえばセビーチェ(海鮮のマリネ/ペルー料理)のような、明らかにボリビア料理ではない、とわかるものが紹介されていたりする。ボリビアは内陸国で海がないからだ。

 しかし実際にボリビアに取材に行ってみると、実に多様な食文化が花開いている。ボリビアは世界屈指の農業国で、亜熱帯性の気候を持つサンタクルス市の食材の豊富さは日本以上である。しかも栄養たっぷりの土壌で育まれる野菜は、人参(にんじん)もほうれん草も日本のものより味が濃い。ボリビア料理は野菜の出汁(だし)・ブロスが基本になっているので、日本人の口に合うものばかりだ。強いていうなら、東北の芋煮のような懐かしい味である。

 ぼくが現地で真っ先に手に入れた資料はボリビア料理の本だった。

 小説のなかで見知らぬ料理を描くとき、ぼくは構造に注意を払っている。たとえば肉じゃがとカレーは構造が同じで、味つけが違う。小説のなかの料理は構造を描くことにある。

 まず煮物、焼き物、揚げ物、炒め物、蒸し物、和(あ)え物、と構造で料理をわける。そして実際に作ってみる。乾燥トウモロコシやアロス(長粒米)など日本で手に入らないものは、似たような食材で代替する。

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