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【続 消えるがん消えないがん】高価な新薬 命を救う医療と費用対価論

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【続 消えるがん消えないがん】
高価な新薬 命を救う医療と費用対価論

オプジーボの薬価が主に反映されている、吉仲勇さんの医療費明細。オプジーボの薬価は下げられたが、総医療費は2000万円を超えている オプジーボの薬価が主に反映されている、吉仲勇さんの医療費明細。オプジーボの薬価は下げられたが、総医療費は2000万円を超えている

 「足が上がらない」。東京都江戸川区の吉仲勇さん(65)が体の異変に気づいたのは平成27年秋のことだった。

 左官として15歳から脚立やはしごを上り下りしてきた。60代になってからも身軽さは若いころとまったく変わらず、左手に鏝(こて)板、右手に鏝という仕事のスタイルを続けてきた。それがいつの間にかおぼつかなくなっていた。家族は「ゾウの足のようにむくんでいる」と心配した。

 仕事を休んで千葉県浦安市の病院に行った。足を見るまでもなく、手を見るなり、医師は即座に「肺がんの疑いが強い」と診断した。吉仲さんの両手の爪は丸く盛り上がっていた。肺の機能不全が爪や、足のむくみに表れていたのだ。

 翌年1月、がん研有明病院(東京都江東区)を紹介された。各種検査を終えての結果は「ステージ4の肺がん」。すでに骨などへの転移も認められ、手術不可能な段階に進行していた。

 「余命2~3カ月かもしれない」。入院前に家族5人で旅行をして半ば覚悟を固めた。

 抗がん剤の治療は入院して半年もたたないうちに、薬物耐性で効かなくなってきた。従来なら一定の効果が証明されている「標準治療」では打つ手がなくなったということになり、緩和ケアを勧められるところだったが、救いの手がさしのべられた。免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)だ。

 厚生労働省が27年12月にオプジーボの適用範囲を拡大、「切除不能な進行・再発の肺がん」に対しても治療薬と承認していた。吉仲さんが投与を受け始めたのは28年9月。適用が遅れていたらすでに命を落としていたかもしれなかった。

 治療に28年度にかかった総医療費は2千万円を超えた。ただ、吉仲さんの出費は1カ月あたり約8万円程度に抑えられた。国民健康保険に加え、自己負担が上限を超えた場合には所得に応じて払い戻される高額療養費制度を併用したおかげだった。吉仲さんは「こんなにたくさん医療費がかかってしまって、申し訳ない気持ちもしているんです」と話す。

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