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【大学ナビ】東大野球部・浜田一志監督が文武両道ノススメ

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東大野球部・浜田一志監督が文武両道ノススメ

 ■チャレンジ精神で「いまを生きる」 大・高・受験生にエール

 文武両道。東京六大学野球秋季リーグ戦での健闘、ベストナインやドラフト指名に選手が名を連ねるなど東京大学野球部の躍進は、この言葉が精神論ではなく、実現できるものであることをわれわれに再認識させてくれた。その名伯楽である浜田一志監督に、指導者また教育者として、受験生をはじめとする高校生、そして大学生が「いま、いかに生きるべきか」について語ってもらった。(編集委員 関厚夫)

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 ◆4つの「T」

 「高校・大学時代は、自分という存在を理解して、どの道に進むべきかを、もがきながら模索する時期です。そんなとき、『1つしか追わない』ではもったいない。さまざまなことにチャレンジして自分を、自分が進むべき道をみつけてください。また、その際、全力で取り組んで初めて、針路というものが見えてきます」

 東京都文京区の東大球場。午前の全体練習の指導を終えた浜田監督は柔和な表情でそう話した。「自分探し」のまっただ中で、人生の大きな岐路を迎えようとしている受験生たち。彼らへのアドバイスを求めると、「一が勉強、二が体調管理。それ以外にないでしょう」と笑いながら続けた。

 「まず合格点を取るために自分がどの科目で、何点取ればいいかを想像してみる。その上で自分の得意科目で安定して点をとるというのが優先順位の1番。2番目は苦手科目で足をひっぱらないこと。自分の実力を冷静に分析せず、『全部合格点以上が必要だ』『全部満点だ』ってやると、うまくゆかないことが多いですね」

 そんな浜田監督が文武の垣根を越えて強調するのが「4つのT」の大切さだ。「Trace(まねる)」「Training(反復練習)」「Think(考える)」「Teach(教える)」というプロセスのことである。

 「最初、何かに興味をもってまねをする。そして何度も練習し、できるようになると好きになる。そこで理屈を考えてゆくとこれが得意となる。最後にそれを武器にするには人に教えられるようにならねばなりません。得意と武器は違います。ここで武器というのは緊張した場面-本番でも使える技術であり、知識のことです」

 ◆発見+経験の豊庫=部活

 この「4つのT」を実践する前提となるのが身近なお手本や人とのつながりをもつことなのだが、こうしたことは浜田監督自身の経験にも基づいている。

 浜田監督は文武両道の名門・土佐高校の野球部で、3年生の夏の大会まで甲子園を目指して一心に白球を追っていた。それから一念発起、現役で東大の理IIに合格する。きっかけは先輩からの「お前は東大に行って4番を打て」というアドバイスだった。

 このとき、浜田監督にとって数学はすでに「武器」だった。もともと数学が「得意」だったため、部活動の後、同級生たちの先生役を務めるようになった。こうして人に教えることによって理解が格段に深まり、それが難関突破のための「武器」となったという。

 「私が高校・大学生活で勉強や学問と部活の両立を勧めるのは、先輩後輩の関係のなかでもまれながら、身近なお手本をみつけることができるからです。さらに部活でリーダーシップをとる人は社会に出ても活躍する確率が高いといわれます。リーダーシップは、主将や部長といった一握りの人たちだけに求められる役割ではありません。上級生になって下級生を指導すること、これも立派なリーダーシップであり、その結果、人間としての視野が広くなります。いずれの経験も、その人にとって得がたい財産となるでしょう」

 ◆磨け!「伝える力」

 大学で何を学ぶべきか。人工知能(AI)・IoT(モノのインターネット)時代の到来でますます答えが見つかりにくくなった観のある問いだが、浜田監督は「AIでもIoTでも、どんな原理でなりたっているのかという基礎と基本をじっくりと学んでください。その時間があるのは大学生のときだけですし、基礎と基本ができていないと進化させることができませんから」と話す。

 また、それ以上に大学で学んでほしいことがあるという。伝える力-「語学力」である。

 「語学力といえば英語を連想しますが、英語は道具であり、語学力の本質とは、伝える力だと考えています。ですから、われわれにとっては日本語の方がはるかに大事です。まずは伝える中身をしっかりもっていること。そして相手の聞きたいこと、何を欲しているか、ということを理解して伝えることです。大学生活ではさまざまな人との多様な出会いがあるでしょう。それは伝える力を磨く実にいい機会です。失敗を恐れず、果敢にチャレンジしてください」

 最後に、「東大野球部監督として受験生にエールを」とお願いした。その答えは-。

 「文武両道を追求することの素晴らしさは、とにかく自分を成長させてくれること、またさまざまなチャレンジのなかで自分というものを見つける機会を与えてくれることです。ぜひ君も文武両道の最高峰-われわれはそう思っています-である東大野球部で、それを実践してみませんか」

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【略歴】

 昭和39年高知県生まれ。東大野球部では外野手で、4年次に主将。1シーズン3本塁打の東大記録保持者。東大大学院工学系研究科修士課程修了後、新日鉄勤務を経て、文武両道を目指す児童や生徒のための学習塾「Ai西武学院」(本校・東京都東久留米市)を設立。平成25年に東大野球部監督に就任。

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