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【話の肖像画】元通産事務次官・小長啓一(4) 激務から解放と思ったのに…

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【話の肖像画】
元通産事務次官・小長啓一(4) 激務から解放と思ったのに…

 〈通商産業相(現経済産業相)の田中角栄氏が昭和47年7月の自民党総裁選に勝利し、第64代首相に就任すると、広報担当の首相秘書官に指名された〉

 通産相の秘書官だった私は省内で総裁選のテレビ中継を見届け、「ようやく激務から解放される」とホッとしたのですが…。なぜ私が、田中さんが首相になっても引き続き指名されたのかは分かりません。秘書官として1年間、お付き合いし、お考えがよく分かるようになっていたからでしょうか。

 当時、最大の懸案は、国交のなかった中国との外交関係でした。党内には台湾との関係を重視し、日中国交正常化は無謀だと考える議員が多かった。しかし、田中さんは就任間もなく、車中で私にこうつぶやきました。「俺は今『今太閤』と呼ばれ、政治権力は絶頂にある。こういう時期にこそ一番難しい問題に挑戦するのが政治家の宿命だよ」と。「中国では毛沢東や周恩来ら革命第1世代が実権を握っている。彼らの目の黒いうちにこの問題を片付けたい。日本企業でも第2、第3世代になると社内の意見が割れて大変だろ」とも話しておられました。

 この年の9月、田中さんは訪中し、日中共同声明に調印し、国交正常化を果たしました。私は同行しましたが、周恩来首相との首脳会談には同席せず、控室で待機していました。会談は何日間にも及びましたが、田中さんは終わるたびに控室に入ってきて議論の一部始終を臨場感たっぷりに話してくれました。今となっては宝物と思える経験です。

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