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【話の肖像画】元通産事務次官・小長啓一(3) 就任3カ月で交渉決着の手腕

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【話の肖像画】
元通産事務次官・小長啓一(3) 就任3カ月で交渉決着の手腕

 〈田中角栄氏が通商産業相に就任した昭和46年は日米繊維問題のまっただ中だった。対日貿易赤字に悩む米政府が繊維製品の対米輸出を自主規制するよう日本政府に求め、交渉は行き詰まっていた〉

 通産省(現経済産業省)は「規制は必要ない」との考えで、田中さんも就任直後の対米交渉ではそう主張しました。しかし状況は好転せず、日米貿易の将来を考えて米国の言い分を認め、約10%伸びていた輸出額を抑える決断をしました。日本の繊維業者には大きな損失になる。役所が知恵を絞って出した案の一つが、繊維業界の古い織機を政府が買い上げ、損失分のお金を業界に支払うという方法です。

 田中さんはこの案を気に入りましたが、2千億円が必要になる。通産省の一般会計予算の半分に当たります。事務方に反対意見が強いなか、田中さんは省幹部に「産業政策上、問題あるか」と尋ねました。「ありません」との答えを得ると、「それなら、これでいこう」と即決されました。続けて秘書官だった私に「首相に電話をつなげ」と指示し、その場で佐藤栄作首相に「2千億円よろしく頼みます」と話をつけた。わずか就任3カ月で、迷走を続けた日米繊維問題を決着させてしまったんです。

 さらに驚いたことに、ご自身の名刺の裏に「主計官殿、2千億円よろしく頼む」と書いて私に渡した。これを大蔵省に持っていけ、と。大きな政治折衝を行うとともに、事務的な交渉もしやすいよう細かな配慮もしていただいたわけです。

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